以前、弊社のインターン生が「要素の次数を変えると変位や計算時間が変わる」ことを洋服ハンガーの解析で確認していましたが、今回はその補足として有限要素法の1次要素と2次要素について説明してみたいと思います。
FEM(有限要素法)では対象となる部材を立体要素、平面要素、はり要素といった小さい要素に分割して解析を行う訳ですが、これらの要素には1次要素と2次要素という種類があります。例えば立体要素の一つであるTETRA(四面体)要素には4節点の1次要素と10節点の2次要素があり、2次要素では各エッジの途中に中間節点が設けられています。
1次テトラ要素と2次テトラ要素
ピストンのモデルを対象として1次要素と2次要素による固有振動解析を行った結果がこちらです。
ピストンのモデルと固有振動解析の結果
1次要素の方が固有振動数が高く計算されており、「固い」ことが分かります。これは要素内の物理量を表現する形状関数が2次要素では2次関数なのに対して、1次要素では1次関数(線形)のため要素ひずみが一様になっていることが原因です。要素ひずみが一様だと1要素の中で曲げ変形を表すことができないため、曲げを含む変形モードで特に計算精度が低下します。
基本的に1次要素より2次要素の方が精度が高いことは事実ですが、どんな場合でも2次要素を使った方が良いという訳ではありません。それは2次要素の方が計算時間が長く掛かるからです。また、1次要素でも立体要素のHEXA(六面体)要素や平面要素のQUAD(四角形)要素には色々な工夫が盛り込まれていて2次要素に劣らない計算精度が得られます。そこでモデル化の方針としては以下のようになります。
立体要素モデルの場合
- HEXA(六面体)要素主体で作成できるのであれば1次要素
- 形状が複雑なためTETRA(四面体)要素のみによる自動メッシュで作成する必要がある場合は2次要素
平面要素モデルの場合
- 自動メッシュでQUAD(四角形)要素主体のモデルが作成できるので通常は1次要素
- 全てTRIA(三角形)要素でモデル化する必要がある場合は2次要素
HEXA要素が完全自動メッシュで作成できれば2次テトラ要素の出番は無くなるのですが、アルテアだけでなく色々な会社が数十年に渡る研究を行ってきたにも関わらずどこも成功していないということは、おそらく不可能なのだろうと思われます。
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