解析よもやま話【第35回:電柱は危険】

台風15号の強風で電柱が倒れたことにより停電が長く続き、被災者の方々はとても苦労されたことと思います。改めてお見舞い申し上げます。以前からこのような被害が起こるたびに電柱をやめて送電線や電信線を地下に埋設する話が浮上していましたが、今回の被害がこれまでにも増して甚大なため、この動きの加速が期待できます。

無電柱化により停電の防止や街の景観の改善が図れますが、交通安全のためにもとても重要です。狭い道路に電柱があるために自動車のすれ違いが難しくなったり、自転車や歩行者が危ない思いをすることはよく経験されていると思いますが、電柱は事故が起こった時の被害の拡大ももたらします。

図は同じ時速56キロメートルで小型乗用車を平らな壁に衝突させた場合と、電柱相当の直径30センチメートルの柱に衝突させた場合を想定してAltair Radiossで計算した結果を比較しています。左側が平らな壁、右側が柱に衝突させた場合です。上から見た図で分かるように、柱に衝突させた場合の方が変形が大きく、ダッシュボードにまで変形が及んでいます。

crash時速56キロメートルで壁に衝突した場合(左)と、電柱に衝突した場合(右)

自動車の車体は色々な形態の衝突を想定して設計されており、平らな壁だけでなく他の自動車とすれ違いながらオフセットして正面衝突する場合でも車体前部が衝撃エネルギー吸収を行って車室の変形を防ぎ、乗員を保護するようになっています。しかし、電柱のような細くて固い障害物に衝突してしまうと、車体の狭い範囲に衝撃エネルギーが集中して車室の変形を防ぎきれなくなります。特に衝撃吸収部材の配置されていない部位にちょうど衝突してしまうと致命的なことになります。スリップして側面から電柱に衝突し、車体が真二つにちぎれてしまった例も見たことがあります。

台風対策として電柱を強化するという話もありますが、それでは自動車が衝突した時の被害はより大きくなりますので、ここは電柱の強化ではなくぜひ無電柱化を強力に進めていただきたいものです。

 

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カテゴリー: 学生支援, 解析よもやま話

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