プレス成形後の板厚の変化は考慮しなくていいのか?
プレス成形CAEの現場では、図面に書かれたブランク材の板厚を用いてプレス成形品の周波数特性を調べる(=周波数応答解析を行う)ことが一般的かと思います。しかし、プレス成形を行うと、間違いなく板厚が変化しますので、この板厚の変化を考慮しなくてよいのか、どうにも気になってしまいました。
そこで、Altair Inspire Formでプレス成形解析を行って成形後の板厚を計算し、その板厚を用いてAltair OptiStructで周波数応答解析を行い、板厚変化を考慮した場合としない場合を比較してみることにします。
プレス成形解析で成形後の板厚を計算
まず、Inspire Formのインクリメンタル解析でプレス成形解析を行い、最終的な板厚を得ます(図1。Inspire Formにはワンステップ解析というお手軽な解析手法もあるのですが、今回の課題では正確な板厚情報が必要なので精度の高いインクリメンタル解析を使用しました)。もともとの板厚は1.0mmですので、半分くらいまで減っている箇所もあることになります。減りすぎだろう、という声が聞こえてきそうですが、チュートリアルデータですのでご容赦ださい。

図 1: Altair Inspire Formによるプレス成形後の板厚分布(メートル表記)
周波数応答特性を比較
次に、Altair HyperWorksで、先ほどの板厚情報を、OptiStructモデルにマッピングします(図2)。 マッピング作業については、フォーラム記事「Inspire Form Incrementalで得られる板厚をOptiStructモデルにマッピングするには?」で詳しく説明しています。

図 2: 板厚をマッピングしたAltair OptiStructモデル(ミリメートル表記)
モデルが完成したので、図3に示す位置に単位荷重を入力(ハンマリング)し、同時に加速度の測定も行います。

図 3: 周波数応答特性入力および測定位置
板厚変化を考慮した場合としない場合の比較が図4です。波形の形は似ていますが、目に見えて波形が左にずれています。

図 4: 板厚変化考慮の有無による、周波数応答特性の違い
成形時の板厚の変化を考慮したほうがよいことも
今回の検証は、たったの1パターンですし、実験データがあるわけでもないので、絶対に結果がずれるとは言えませんが、少なくとも、プレス成形による板厚の変化を考慮すると、目に見えるレベルで周波数特性が変わる可能性があることは示せたと思います。
もし、プレス成形部品の周波数特性が実験とCAEで微妙に合わない、というようなときには、板厚の変化を考慮してみるのも一手かもしれません。
プレス成形シミュレーションツールAltair Inspire Form
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