スポーツと物理学 – 重量が重くなってもバーベルは壊れないのか?

ウェイトリフティングのバーベルはたわんでいる

世界最強のアスリートが集結し、重いものを持ち上げるウェイトリフティングは、もっとも純粋な力比べの競技ともいえます。競技を見ていると、バーベルの両側に高重量がかかっているため、バーベルがたわんでいることに気づくと思います。

参考までに、2000年シドニーおよび2004年アテネのオリンピックで2度優勝したホセイン・レザザデ選手は、264.4kg(580.9ポンド)を持ち上げ、クリーン&ジャークの記録を更新しました。動画を見ると、ホセイン選手がスクワットでフルクリーンをした後、立ち上がってバーベルをキャッチし、ディップしてスプリットジャークに移る際に、バーがひどくたわむのが分かります。躍動感あふれる動きの中で、体の動きや動作によってバーのしなり方が変わってくるようです。

ホセイン・レザザデ選手が2004年に記録した264.4kg(580.9ポンド)のクリーン&ジャーク

バーベルの動きを見て、一定の重量を超えるとバーが壊れてしまうのではないか?と疑問に思いました。

バーベルの動きをシミュレーション

バーベルは、非線形の動きを考慮して設計されています。つまり、バーが下に引っ張られても、どちらかに重りをつけて上に持ち上げられても、壊れたりひびが入ったりしないように、ある程度の柔軟性を持った設計になっています。

世界記録となったクリーン&ジャークをシミュレートするために、Altair® SimSolid™を使用してバーベルの動きと重量の変位を検討し、バーベルがこれらの高強度の動きの間の動的な負荷に安全に耐えられるかどうかを確認してみました。SimSolidのソルバーは、線形の静的特性、モーダル特性、連成も含めた熱解析に加えて、フリーウェイトエクササイズ機器で生み出される動きのような、非線形、過渡的な動的効果の解析をサポートしています。

はじめに、クリーン&ジャークの全体動作中に発生するモーションをシミュレートするため、Altair Inspireのモーション解析モジュールでバーのプロファイルを設計しました。Inspire内に統合されているので、構造解析やトポロジー最適化の際に境界荷重を簡単に確認することができます。

Altair Inspireで作成された変位プロファイル

Inspireで得られた変位と加速度の結果をSimSolidに読み込み、リフトに伴うバーベル上の応力を検討しました。バーベルでは、ウェイトプレートとバーの間、およびプレート自体の間の接着された接触条件をスライドに変更しましたが、これは接着された接触がモデルの剛性を高める可能性があるためです。摺動に変更することで、人為的な剛性の増加を抑えることができます。

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バーの中央に適用される固定高速

固定サポートを使用したモーダル解析と、それに続くInspireでの過渡動的解析を実行して、基本励振を確かめました。このモデルのタイムスパンは、完全にモーションが完了するまでにかかる時間に基づいて設定され、ダンピングは0.2に設定されています。

SimSolidによるバーベルのモーダル解析

SimSolidによるバーベルのモーダル解析

SimSolidによる応力集中の結果

Inspireの変位プロファイルは、クリーン&ジャーク中にバーベルが異なるポイントで屈曲する際の振幅の変化要因を示しています。

このシミュレーションでは、固定サポートに基本的な加振を追加し、CSVの時間関数を割り当てることで、Inspire Motionと同様にアセンブリが上下に動く様子を示すことができましたが、実際はバーが柔軟に屈曲します。そこで、重力をシミュレートするために並進慣性を加えたところ、明らかに減衰不足で振動が大きすぎる、現実離れした結果になってしまいました。

初期の変位結果は、アンダーダンピングが強すぎて、過剰な振動が発生していた

手の動きを再現してより現実に近づける

バーの中央に配置された不動の支持体は、応力集中(応力レベル1186MPa)を引き起こすため、現実的ではありませんでした。減衰不足の振動は非現実的なほど大きなたわみをもたらしたため、今度は、より現実的な制約とより大きな減衰を適用することにしました。

SimSolidによる応力集中の結果

SimSolidによる応力集中の結果

バーの中央部にある不動の支持体の代わりに、仮想ブッシュをモデルに適用し、リフト中にバーを保持する手をシミュレートしました。剛性はZを中心とした回転(バーフレックス)を許容しつつ、他のすべての自由度をサポートするように調整し、より現実的なたわみと応力を実現しました。

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各ポイントでバーを持つ手をシミュレートするために仮想ブッシングを適用

ブッシングでは基本的な加振を行うことができないため(加振するための不動の支持体がない)、代わりにInspire Motionで得られた加速度を使用して、あたかも動いているかのように慣性を適用しました。

クリーン&ジャークのシミュレーションを行った際のバーベルの加速度プロット

SimSolidに戻って過渡解析を行い、ダンピングを0.3と0.5に設定して両シミュレーションの影響を比較しました。0.3のダンピングでは、612MPaの応力が発生し、リフトの大きな動きの際に急激な応力のピークが見られました。バーは非常に短いインパルスでも問題なくこの応力に耐えることができましたが、まだ実際には、わずかに減衰不足である可能性があります。

減衰力0.3の解析では、55.9mmの変位結果が得られた

0.5減衰の解析では、応力結果が545MPaとなり、減衰が大きいほど、たわみが小さくなり、応力が小さくなっていることがわかります。

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最終シミュレーションでダンピングを0.5に設定

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リフト中の最大応力位置の応力プロット

リフトアップ時の応力結果を見ると、全体動作では非常に速いピークがあり、約220MPaの静的応力が発生していました。

構造解析でわかるバーベルを持ち上げる力

バーベルのより詳細な構造解析を行うため、Altair OptiStructを使用してバーの初期設定をモデル化しました。バーとウェイトを含めた総質量は280kgで、世界記録を達成したリフト時のバーとウェイトの質量とほぼ同じでした。

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Optistructによるバーベル持ち上げのシミュレーション

この画像から、実際にバーベルを持ち上げるためには、両腕に1380N以上の上向きの力が必要であることがわかります。その力を加えてバーベルを頭上に持ち上げた後、バーベルの大きさと全く同じ大きさになるように上向きの力の大きさを小さくしていけば、平衡状態に達することができます。これは、重量をどれだけ上げるかだけでなく、重量をどれだけ速く上げるかも、リフトを正しく完了するためには重要であることを証明しています。

バーベルを落とすときの衝撃

OptiStructでのバーベル落下

別視点からのバーベル落下シミュレーション

 

選手がバーベルを落下させると2mの高さからの落下になり、平均速度6.32m/sで地面に衝突し、通常の床では49万N以上の衝撃力が発生します。安全のためには、ドロップパッドのような適切な設備が重要であることを示しています。ドロップパッドに充填された発泡体が衝撃を緩和し、設備、床、アスリートの足を保護します。

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バーベルを持ち上げるときの荷重は2,760N、落とすときの荷重は490,000N

結論:壊れそうにない

バーベルの強度は1000MPa以上のものが多く、それ以上の応力がかからないと壊れないとされています。また、バーベルの表面には、グリップ力を高めるためのコーティングや処理が施されているものもありますが、表面の耐久性や強度を高めることもできます。

シミュレーションの結果、ピーク応力は非常に高かった(500~650MPa程度)ものの、持続時間が短いため、バーはその応力に耐えられる可能性が高いことがわかりました。また、OptiStructでバーの非線形挙動を確認し、運動中に発生する力も示せました。

Altairのシミュレーションソリューションについて詳しくは、www.altairjp.co.jp/simulation-driven-design/をご覧ください。

 

*本記事は、米国本社の「Are Barbells Designed Strong Enough to Withstand the Next World Record Lift?」を翻訳したものです。

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カテゴリー: Innovation Intelligence Global, Tips

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