IH加熱のシミュレーションのジレンマ
IH加熱のシミュレーションをする場合、電磁場解析ソフトウェアで、電流、磁場、熱を連成して解析するのが最も一般的な方法かと思います。アルテアのラインナップでは電磁場解析ソフトAltair Fluxで行うことになります。
この方法は、一つのソフトウェアでシミュレーションが完結するので楽なのですが、弱点もあります。電流、磁場というのは変化の速い現象ですから、シミュレーションはミリ秒のオーダーで少しずつ時間を進めていきます。しかし温度と言うのは、秒、分と言う単位で変化がゆっくり進みますので、ミリ秒のオーダーの電流、磁場のシミュレーションに付き合うと、大変な繰り返し計算数が必要となり、大変な時間が掛かることになります。

このように短い周期での計算を何十秒、何十分も繰り返さなくてはならない
そこで今回は、電磁場解析のAltair Fluxと、構造・熱流体解析のAltair OptiStructを組み合わせ、圧倒的な高速化を図ってみます。
100分の加熱シミュレーションが25秒で完了
アイデアとしては、電流と磁場はミリ秒単位で刻々と周期的に変化していますが、熱伝導解析をするときはそれを無視することにします。その代わり、1周期もしくは数周期分の平均発熱を計算し、それを熱伝導解析に渡して、必要な時間、何十秒でも何十分でも、加熱することにします。
まずFlux時間平均の発熱量を計算します。そしてOptiStructフォーマットで、要素ごとの発熱量を出力します。

時間平均の発熱量。平均化されているので発熱にムラがない
次にOptiStructで伝熱解析をするための設定を追加して、実行します。計算時間は、現象の長さではなく、どれくらいのステップ数計算するのかに依存するので、どれだけ長い現象でも計算できます。

5分刻みで20ステップ、合計100分間加熱しつづけてみました。
上の100分の場合、OptiStructの計算時間はちょっと古いノート PC(i7-6820H CPU)でたったの25秒です。
さまざまなシミュレーションができる可能性
上のシミュレーションでは外気への熱伝達、空間への輻射を考慮していませんでしたが、もちろん熱伝達も輻射も考慮できます。さらに、FluxのIH加熱シミュレーションに関係していなかった部品をOptiStruct側に追加して、より詳細なアセンブリ状態のシミュレーションもできますし、Fluxからもらった発熱量のスケーリング、または、異なる発熱状態を持つ荷重ケースの引継ぎなどもできます。熱源が移動するような場合でも、Flux側から数パターンの発熱状態をもらい、それらをスケーリングしたり引継ぎしたりしながら、ちょっとした移動熱源シナリオを作ることもできます。
IH加熱シミュレーションにとんでもなく計算時間が掛かっている方は、FluxとOptiStructの組み合わせで計算時間を大幅に改善できそうです。実際の使い方、お試し用のモデルについてはこちら(要ログイン)で解説していますので、是非試してみてください。