両端固定梁と単純支持梁で考える拘束条件の重要性

構造解析初学者のためのエッセンスシリーズ第1回

初めまして、Altairでインターンをしています、修士2年の石元と申します。

学生にとって、FEM構造解析はなかなかハードルの高く、講義やサークル活動、研究活動で使い始めたものの、「基本的な操作が習得できない」、「計算結果は出たけど条件の設定が適切かわからない…」といった壁にぶつかる方も多いと思います。そこで、材料力学の教科書に登場するようなシンプルな問題を用いて、構造解析の初学者にとって重要なエッセンスを解説するブログシリーズを始めたいと思います。

第1回は単純支持梁を例として、拘束のイメージと構造解析における拘束の重要性を考えます。実際の解析の様子を収めた動画も収録します。単純な解析なので、初めての方や解析に慣れていない方はぜひ操作の参考にしてください。

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1. 拘束条件のイメージ

解析を行うためには、モデル化の対象がどのように拘束されているかを正しく見極める必要があります。今回は単純支持梁と両端固定梁を例に考えます。単純支持と両端固定は以下の写真の状態をイメージしてください。単純支持が土台に梁が置かれた状態であるのに対して、固定は両端が移動も回転もしないようにがっちり固定されている状態です。

単純支持
両端固定

2. 拘束条件の違いが及ぼす影響を考える

まず、単純支持梁の中心に集中荷重が作用する問題でたわみと応力を算出します。今回は以下のような値を用いました。

解析モデル
図 1 解析モデル

解析的解法により得られる解は次のようになります。
単純支持 解
これを数値的解法、OptiStructによる線形静解析でも解析していきます。
3つの節点と2つのビーム要素を作成します。中央の節点に荷重を負荷し、両端の節点に”適切な”境界条件を与えます。

変位のコンター図          図2 変位のコンター図
応力のコンター図
                      図3 応力のコンター図

 

C点の変位 最大応力
解析的解法 2.021 mm 25.46 MPa
数値的解法 2.021 mm 25.46 MPa
                                     表 1 解析結果(単純支持)

このように材料力学の基礎的な問題は理論解と数値解析解が一致します。

では、拘束条件を両端固定とした場合はどうでしょうか。
解析的解法により得られる解は次のようになります。
両端固定 解

C点の変位 最大応力
解析的解法 0.505 mm 12.73 MPa
数値的解法 0.505 mm 12.73 MPa
                                    表 2 解析結果(両端固定)

<解析の手順>

単純支持と両端固定の違いはz軸周りの回転が自由であるか固定であるかのみです。これだけの違いで応力と変位に大きな違いが生じています。実際の現場ではCAEエンジニアによる解析結果を元に設計が進められます。今回の例で、実際は単純支持であるのに両端固定で解析し、その結果を元に設計したとします。実際の応力・変位は両端固定の場合のそれぞれ2倍,4倍となり、構造が破壊してしまいます…。

3. 最後に

今回は単純な例で境界条件の違いによる影響を考えてみました。境界条件の設定はメッシングと比較してかなり短い時間で行えますが、結果に大きな影響を及ぼすことがわかりました。実際の設計現場では実機の挙動と比較しながら慎重に境界条件を設定していくことになるようです。正しい境界条件の適用を習得するためには、実際の現象と向き合いながら根気よく取り組んでいく必要がありそうです。

また、今回の内容は『有限要素法(FEM解析)の実践』(無料eブック)のpp.306-309を参考にしています。より理解を深めたい方はぜひダウンロードしてみてください。

>> 第2回:先端に集中荷重が作用する片持ち梁の最適形状は?

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カテゴリー: Tips

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