構造解析初学者のためのエッセンスシリーズ第3回
アルテアでインターンをしています、博士後期課程1年の石元です。
構造解析の初学者にとって、解析のエラーや結果の妥当性の判断というのは大きなハードルの1つだと思います。エラーの原因特定に膨大な時間を費やしたのに、結局何も特定できずに途方に暮れてしまう…なんてこともあるかもしれません。
そこで今回は、エラーが発生した際、あるいは解析が完了した際に、まずどこをチェックすべきなのか、効率的な解析のための一般的な対処法とチェックポイントについて説明します。
第1回:単純支持梁と両端固定梁で考える拘束条件の重要性
第2回:先端に集中荷重が作用する片持ち梁の最適形状は?
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1. エラーへの対処法と解析結果のチェックポイント
解析でエラーが発生したら、まずはエラーメッセージを確認しましょう。メッセージの内容から原因の特定に至らない場合でも、その後の調査や質問する際に役立ちます。
◆ マニュアルやコミュニティサイトで調査
使用しているソフトのマニュアルやコミュニティサイトがある場合は、役に立ちそうな項目がないか確認します。アルテア製品のユーザーは、各製品のマニュアルやコミュニティサイト(Altair Community)を利用して、豊富な解説記事を読んだり、質問を投稿したりできます。
◆ 熟練者やサポート窓口に質問
身近に構造解析の熟練者がいる場合は、相談してみましょう。同じソフトを使用していなくても、一般的な解析の問題であれば、解決につながる可能性があります。使用しているソフトのサポート窓口が利用可能な方は、現状の問題点を整理したうえで問い合わせてみましょう。
◆ 解析結果の確認
エラーが発生せずに解析が完了した場合でも、必ずしもそれが妥当な結果であるとは限りません。特にFEM(有限要素法)の経験が浅い方はコンタープロットの見た目に騙されてしまうことが多々あります。変位と応力の大きさは、必ず最初に確認するようにしましょう。変位と応力のコンタープロットが一見問題なさそうでも(微小変位を仮定しているにも関わらず)、オーダーの変位値があったり、線形弾性材料で1000 MPaを超える応力が生じていたりすることがあります。
2.よくある間違いやエラー
◆ 要素が連結していない
図2のモデルのように、一部の要素が連結していない(重複要素が生じている)場合、局所的にメッシュの不整合が生じます。要素が連結していないエッジは赤で表示されています。

図1 連結していない要素
エラーの原因にはなりませんが、解析結果が変化してしまいます。図2のコンタープロットを確認すると、要素が連結していない部分で変位が不連続であることがわかります。鏡面移動や平行移動の操作を誤ると、重複要素が生じることがあるため注意が必要です。

図2 変位のコンタープロット
◆ シェル法線が正しくない
図3は単純な板に曲げ荷重が負荷されたものです。要素の底面の応力コンタープロットが、急に引張(正方向)から圧縮(負方向)に変化しています。

図3 板の曲げの応力コンタープロット
これは要素の法線方向が異なることが原因です。図4のように、緑の領域では底面Z1が板の上側にありますが(引張)、青の領域では底面Z1が要素の下側にあります(圧縮)。このような場合はシェル法線を統一する修正が必要です。

図4 シェル法線の方向
◆ 材料特性
単位系が一貫していない場合(ミリメートルとメートル、キログラムとトンの混在など)、エラーになることがあります。重量ポンド(lbf)からニュートンなど、物性値の単位系を変更する際は、特に注意が必要です。また、タイプミスによって入力する数値を間違えた場合でも、警告メッセージは表示されないので数値のチェックは念入りに行うようにしましょう。
◆ 境界条件と荷重
境界条件と荷重の設定はエラーが非常に起きやすい作業です。例えば、拘束(または力)を仮の節点に適用したときに、モデリングエラーが生じることがあります。

図5 仮の節点に境界条件を追加した例
仮の節点(図5の黄色の節点)は有限要素の節点とは異なるので、意図したとおりに構造を拘束できなかったり、荷重が負荷されなかったりします。剛体モードが生じるエラーや怪しい結果が出力されてしまいます。
◆ 全角文字を使用している
ファイルパスに全角文字が含まれていることがエラーの原因の場合があります。ソフトによっては全角文字に対応していない場合があるので、材料の名称などのソフト内で使用する文字についても半角文字を使用することをお勧めします。
3. 最後に
今回は構造解析でエラーが発生した際の一般的な対処法とよくある間違いについて説明しました。解析ソフトにある程度熟練するまで、エラーへの対処はハードルが非常に高いと思います。エラーの原因にまったく検討がつかない場合は、今回挙げた対処を試すことで原因が特定できることもあります。ぜひ参考にしてみてください。
また、詳しい内容が『有限要素法(FEM解析)の実践』で解説されています。さらに理解を深めたい方はぜひダウンロードしてみてください。
第2回:先端に集中荷重が作用する片持ち梁の最適形状は? << >> ??
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