身近な科学検証シリーズ
短いボルトをきつーく締めると緩まない気がしませんか?見た目にすごく丈夫そうだし、建築物でもよく見かけます。Altairパートナーアライアンスには、Cobra(CETIM社)というボルト締結検証ツールがあるので、緩みにくい締め方を検証してみます!
検証にあたり、FEMモデルを自分で作ってAltair OptiStructで計算しても良いのですが、条件を変えるたびにFEMを作るのが面倒なので、今回は専用ツールを使います(CobraはAltairのユニットライセンスで使用可能です)。
1. ボルト&ナットで直接締めてみる
図1の部品2枚を、M10ボルト・ナットで締結し、2600Nの力で緩む方向に荷重を設定します(図2)。

図1: 被締結体

図2: 荷重条件
設定手順は以下のとおりです。
①ボルトねじの選択:並目M10をカタログから選択します
②ボルトヘッド選択:六角スクリュータイプのグレードA/Bをカタログから選択します
③ボルトクラス選択:ボルト材料は9.8クラスを選択します
④ナット選択:六角ナット、スタイル1、グレードA/Bを選択します
⑤被締結体材料選択:ステンレス鋼のAISI 304を選択します。圧縮降伏応力は600MPaを指定しました
⑥摩擦係数選択:標準的なものをカタログから選択します。締め付けトルクの誤差は1%としました
このように、カタログから選択したり、簡単な寸法を入力するだけで、締結モデルが完成します(図3)。とても簡単です。

図3: モデル断面図
直接締める場合、運が悪いと緩む
結果は図4です。最低限必要な軸力①が23,472Nです(=23,472N以上の力で締められていないと緩んでしまいます)。Cobraは寸法、摩擦係数、締め付けトルクの誤差を評価しているので、達成できる軸力について、平均③、最大④、最小②を評価してきます。最小の場合、軸力が22,073Nにしか到達しないので、この組み合わせだと運が悪いと緩んでしまうという結果になりました。⑤はそれを可視化したものです。

図4: ボルト・ナットを直接締め付けたときの結果
2. カラーを挟んで締めてみる
次に、上下に5mmのカラーをはさんで、ボルトを10mm長くしてみます(図5)。

図5: 合計10mmのカラーをはさんだ場合の断面図
結果は以下の通りです。必要な軸力が21,275Nですが、最低でも22,073Nの軸力を達成できるため、この構成なら緩みません。

図6: 合計10mmのカラーをはさんだ場合の結果
この結果から、カラーを挟んでボルトとナットの距離を長くした方が緩みにくくなる、ということが分かりました。
3. ワッシャーを挟んで締めてみる
あまり締結のことが考慮されていない商品を買うと、すぐに緩んでしまいますが、個人でも、多少なりとも緩みにくくする手段はあります。それはワッシャーをはさむことです。検証してみましょう。

図7: ワッシャーをはさんだ場合の断面図
ワッシャーもカタログから選択できます。大きなグレード A/B の平ワッシャーを選択してみました(図8)。

図8: ワッシャー選択
ワッシャーの材料はステンレス鋼AISI 430を選択しました(図9)。圧縮降伏応力は600MPaとします。

図9: ワッシャー材料選択
結果はこちらです(図10)。場合によってはまだ緩みますが、緩む可能性はかなり減らせることが分かりました。

図10: ワッシャー使用時の結果
結論:カラーなどを挟んでボルトとナットの距離を長くした方が緩みにくくなる
冒頭で、短いボルトをきつく締めれば緩まなそうと書きましたが、全くそんなことはありませんでした。身の回りの物が緩んだら、とりあえずワッシャーをはさんでみるだけでも効果ありです。ボルト締結検証ツールCobraは簡単で役立つので、ぜひ皆様も使ってみてください。
Altair Unitsで使えるパートナー製品Cobra | APA