3Dプリンティングパーツの設計 2.理想形状編

測定とモデリングが終わったので、設計要件を固めていきます。要件は「部品数を減らしてスッキリとした見た目にしたい」でした。

1.位置決め(干渉チェック)

スッキリとした見た目のため、なるべくナンバープレートを車体側へ寄せたいとのことで、ナンバープレートとタイヤの干渉チェックを行うことにしました。
実車が自分の手元にあればもっと簡単ですが、今回は画像からリアサスペンションのストローク時の挙動を調べます。下図のようにInspire Studioに画像を取り込み、イメージプレーン機能で画像からピクセルの距離を測り、アームのピボットとタイヤ取り付け位置からタイヤの軌跡をスケッチしました。走行時にタイヤと干渉することだけは避けたいので、安全をとってナンバープレートはリアのテールライトに面一で取り付けることにします。

画像出典:https://www.husqvarna-motorcycles.com/ja-jp/models/naked/svartpilen/svartpilen-401-2021.html

https://www.husqvarna-motorcycles.com/ja-jp/models/naked/svartpilen/svartpilen-401-2021.html の画像を基に作成

2.部品の配置

次に、プレート周りに必要な部品4種(ナンバープレート、ナンバー灯、ウインカー、反射板)の配置を決めます。今回は以下の3案を出してみました。

3Dプリンティングパーツの設計 2.理想形状編 3Dプリンティングパーツの設計 2.理想形状編 3Dプリンティングパーツの設計 2.理想形状編
①ナンバープレート上部に全パーツを横一列に配置 ②ナンバー灯をナンバープレートの締結につかう ③現状の配置と同じ、反射板を下に配置

②はインターネット上にそのような画像がたくさんあり、部品点数も少なくなるので一番理想的ですが、ナンバープレート全体を照らせず車検が通らなかった例も見られたため没になりました…③では反射板取り付け用に部品数と重量が増えてしまうので、今回は①を選択することになりました。

3.設計空間

3Dプリンティングパーツの設計 2.理想形状編

以上を基にAltair Inspireで設計空間を決定してみました。画像の茶色いパートが、最適化計算を行う範囲です。3Dプリント時の体積を減らすため、左右対称を条件に加えています。路面入力として4Gの重力を加えています。

4.材料決定

3Dプリンティングの材料には、主に金属とプラスチックの2種類があり、材料選定のために簡単なモデルで計算を行いました。プラスチックの場合、積層方向などで強度が変わりますが、現段階では弱い方向の材料定数を選択することにし、以下3つの材料で検討してみます。

材料 比重[g/cm^3] ヤング率[GPa] 降伏応力[MPa] 出典
ABS 1.04 2.3 27.5
Nylon 1.0 1.7 58
Aluminum 2.7 65 215

出典1:https://www.kabuku.io/guide/
出典2:https://3dprinter.co.jp/product/uam3d/uam-material/

形状を簡単なものに置き換え、部材が壊れないか手計算で評価していきます。下図のような重力のかかる片持ち梁を想定し、端部にナンバープレートを想定して250g分の集中荷重を付与します。さらに、主な外力は路面入力による振動なので、4Gの重力による部材の自重を等分布荷重として付与します。

3Dプリンティングパーツの設計 2.理想形状編

計算結果は以下のようになりました。

計算結果 最大曲げ応力[MPa] 安全率
ABS 0.843 32.5
Nylon 0.841 68.9
Aluminum 0.937 229.3

ネットで調べると自動車部品は安全率8くらいでしたので、計算上はどの材料を使用しても問題なさそうです。金属プリントの予定でしたが、軽量安価に済ませるために、今回はNylonを選択してみようと思います。

5.最適化計算

より硬く、より軽い形状を目指し、まずは以下のように解析条件を設定しました。

目標 剛性の最大化
質量目標 設計領域の体積の30%
周波数制約 周波数の最大化

下のように出力されました。

画像右のシークバーを左にずらす(要素密度を減少させる)と下のような形状になります。まだ軽量化の余地がありそうです。

質量目標を減らして何通りか解析してみます。

目標 剛性の最大化
質量目標 設計領域の体積の10%
周波数制約 周波数の最大化

シークバーの中央でかなりいい感じな形状が出力されています。

この状態で静解析を実行してみます。

応力コンター図
(最大応力0.97MPa)
変形図
(最大変位0.2mm)
振動モード図
(モード1振動数79.6Hz)

応力、変位、モード1振動数ともに問題なさそうです。形もトポロジー最適化らしい、3Dプリンティングならではの形でよさそうです。

次回はこの形状を元にモデルを作成し、実車合わせを行っていきたいと思います。

3Dプリンティングパーツの設計 1.モデリング編

関連ソフトウェア

  • 工業デザインとレンダリング – Inspire Studio
  • アイデアの創造と最適化 – Inspire
  • 3Dプリンティングに適した設計とシミュレーション – Inspire Print3D

 

3Dプリンティングパーツの設計

  1. モデリング編
  2. 理想形状編
  3. 最適化結果をモデリング&干渉チェック
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カテゴリー: 事例

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