眼鏡周りの気流の可視化

初めまして。アルテアでインターンとして働いている大学院修士1年の井上です。

インターンを始めてから約4カ月になり、沢山の方々に関わりながら今は少しずつ業務にも慣れてきたところです。その業務の中で、一つ自分の興味のあるテーマから解析事例を作るという機会を与えて頂きました。そこで今回は、学部4年の時に使っていた熱流体解析ソフトAltair AcuSolveとインターン業務の中で最も触れることが多いHyperMeshで解析を行っていきました。ここでは一連の解析を行う中で学んだことについてお伝えしたいと思います。

タイトルの通り、眼鏡の周りの空気の流れに興味を持ったのは、眼鏡を掛けることで目を乾燥から守れるのではないかと思ったことがきっかけでした。風の強い日に外を歩いている時やエアコンが利いている部屋にいるときは、突風や空調の風が直接当たるため目が乾燥することが多いです。そのときに眼鏡を掛けることであまり目が乾燥しなくなったので、風から目を防ぐ効果があるのではないか、だとすればどのように防いでいるのか疑問に感じました。しかし、実際の空気の流れを見ることはできないため、これは丁度いい機会ということでAcuSolveを使って流れを可視化してみようと思いました。

解析モデルは以下の図1~3のように、顔と眼鏡のモデルで成り立っています。これらはHyperMesh内でモデル修正、メッシングを行い、計算領域を作成した後にAcuSolveへジオメトリーをインポートしました。

正面図
図1.正面図
右側側面
図2.右側面図
平面図
図3平面図

インポートした後は、AcuConsole内で表1のように解析形式、流れの方程式、境界条件といった解析設定をしていきました。風速を-5[m/s]としているのは、GPV気象予報 風速の目安[1]を参考にして、木の葉や細かい小枝が絶えず動く軟風と呼ばれる流速に設定したためです。

表1.解析の各種設定
解析形式 定常状態
流れの方程式 ナビエ・ストークス方程式
乱流方程式 Spalart Allmaras
最大ステップ数 100
収束公差 0.001
緩和係数 0.4
流入条件 -5.0[m/s] (x方向)
流出条件 0[Pa]
壁面条件 Slip

次に計算領域内のメッシュを作成していきました。このとき、流れの変化が大きい所ではメッシュを細かくし、変化が小さい所では粗くしていくのですが、まだメッシュサイズに関する知識が無いので社員さん達に手伝って頂きました。その結果として図のようにメッシュサイズが場所ごとに変化している様子が分かります。

blog-Glass-face04

図4. 全体メッシュ

以上の解析結果をHyperViewで表示しました。ここには三つの顔モデルがあり、それぞれの圧力分布をコンター表示しています。カラーバーより、顔の前面は圧力が高いため赤くなっていますが、中央のモデルでは目の周りが緑色になっていることが分かります。右側のモデルが眼鏡無モデルと有モデルの圧力差を表示したものですが、その値が最大で約17[Pa]となっています。つまり、眼鏡を掛けることによって目に当たる風の圧力を減らせることが分かりました。

blog-Glass-face05

図5. 圧力分布図(眼鏡無・有・差分)

解析結果より目の周りの圧力が低下していましたが、その原因を考察するためにAcuFieldViewを使って流れ場をベクトル表示しました。

blog-Glass-face06

図6. 速度の流れ場表示(眼鏡無・有)

二つの図を比較すると、青色の矢印の存在する場所が変化していることが分かります。青色の矢印がある場所は淀み点と言って、速度が0の部分を表しています。眼鏡を掛けてない場合では、淀み点が目の周りに存在しているので、目の周りの圧力が高くなっていると考えられます。反対に眼鏡を掛けている場合では、淀み点が目の周りよりも眼鏡の表面に多く存在していることが分かります。これにより、眼鏡が目に直接当たる風を防いでいるために、目の周りの圧力が低くなっていると考えられます。

さらに流れ場を眼鏡の上方向から見た図を以下に示します。これより眼鏡を掛けていない場合では、目に対して垂直に当たる矢印が多いことが分かります。しかし、眼鏡を掛けている場合では目に対して水平に流れる矢印が多いことが分かります。したがって、眼鏡は目に向かって流れる気流を水平に受け流す作用を持っていると考えられます。

blog-Glass-face07

図7. 上方向から見た速度の流れ場表示(眼鏡無・有)

以上より眼鏡が気流から目を保護する作用を果たしているということが分かりました。これにより目の乾燥も防いでいると考えられます。これからの季節、目の乾燥に悩まされる場合には是非眼鏡を掛けることをお勧めします。

今回の事例では流体解析を行いましたが、普段目にすることの出来ない風の流れを可視化できるというのは非常に興味深いです。しかし、解析結果をより現実のものに近づけていくには、微分方程式の意味や要素分割の仕組みをしっかり理解する必要があると実感しました。これからもAltairの解析ソフトを使う機会が沢山ありますので、操作をする中で繰り返し学んでいきたいと思っています。

参考文献
[1]: GPV気象予報 風速の目安、http://weather-gpv.info/ (参照日2019/06/28)

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カテゴリー: 学生支援

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