デジタルで真実を暴く:「静電気が怖いから指先で触る」のは正しいのか?

自動車のドアを開けるときなど、静電気が怖くて、ついつい指先で触ろうとしてしまいませんか?そして警戒むなしく、結局「バチッ!」とやられていませんか?本ブログで、この指先で触ろうとする行為が、電磁気学的に正しいのかどうかを検証したいと思います。

検証方法を説明する前に、まずは、どうして静電気でバチっとなるのかを考えてみましょう。これは二つの物体の隙間の空気に電流が走るからです。ではどうして空気に電流が走ってしまうかと言うと、二つの物体の電位差、いわゆる電圧が空気に電流を通すほど大きくなってしまうからです。つまり、二つの物体の電位差が大きいほど、「バチッ!」となりやすいと言えます。

アルテアはソフトウェアベンダーなので、シミュレーションで検証します。アルテアにはAltair Fluxという電磁場解析ツールがありますが、超高機能すぎて正直慣れるまでがなかなか大変です。そこで、アルテアのライセンスで使える他社製品ラインナップ(Altairパートナーアライアンス)のChargeという静電場解析ツールを試してみたところ非常に簡単で、30分ほどでなんとなく使い方が分かってしまいましたので、このツールを使って検証していきます。

指先を近づけた場合

指先を近づけているモデル(図1)を用意しました。

デジタルで真実を暴く:静電気が怖くて指先で触るのは正しいのか?

図 1: 指先を近づけるときのモデル

Chargeは境界要素法を用いているため、このように形状だけ準備すれば空間に対するメッシュは不要で、準備がとても簡単です。また、材料は次のように、帯電させたい物体をConductor(導体)、指をDielectric(誘導体)にしておきます。Conductorにした方は、Capacitance Matrix Extractionという解析を行うときに、自動的に1V掛かり、Dielectricの方は成り行きで決まります。材料も選ぶだけなので、この部分もとても簡単です。

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図2: 材料定義

図3が帯電状況ですが、これを見ても、指先からの放電のしやすさは分かりません。

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図3: 帯電状況

そこで、図4のように、指の先端から帯電物に向かって線を引いておきます。これで、簡単に線上の電圧分布が描けます。ここも便利です。

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図4: 電圧グラフを描くために引いた線

図5が指先と帯電している物体の間の電圧分布です。電圧は絶対値ではなく、差が重要です。このモデルでは指と、物体の間に0.02Vの電圧が生じていました。

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図5: 指を近づけたときの電圧分布

手のひらを近づけた場合

次は手のひらを近づけてみましょう(図6)。手のひらは半径50mm、厚さ20mmの円筒としました。帯電させる物体、隙間は同じ条件です。

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図6: 手のひらモデル

帯電状況(図7)を見ても、放電のしやすさは分からないので、

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図7: 手のひらの場合の帯電状況

同じように間の電圧(図8)を確認してみると、0.005V掛かることが分かりました。これは指先モデルの1/4です。指先で触るよりも手のひらで触る方が放電の可能性が低いことがわかりました。

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図8: 手のひらを近づけたときの電圧分布

結論:勇気を持って手のひらで触ろう

非常に簡単に、結論がでました。指先で触る方が、あの「バチッ!」を避けられるような気がしてしまいますが、実は手のひらで触る方が可能性が低いという結果になりました。

Chargeは、物を配置して静電場をちゃちゃっと計算するには、持ってこいのツールです。形状の表面メッシュだけ用意すればよいし、材料も選択するだけですし、解析条件を設定する必要もありませんでした。ただ、実際に指を動かしてみたり、静電気で動かしてみたりとなるとAltair Fluxが必要です。Fluxはなかなか難しいですが、マスターすれば幸せになれるツールであることは、私が保証します。用途に応じて使い分けてみてください。それではまた。

Fluxの製品概要 Chargeの製品概要 電磁界解析ソリューション

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