HyperWorksを使いこなすシリーズ ~構造解析・最適化への道~ #03 一端固定梁の問題を解いてみる

博士前期課程1年の安田と申します。アルテアエンジニアリング様とご縁があり、学生向け無償版CAEソフトウェアHyperWorks Student Editionを用いた構造解析・最適化の体験談を語っていくこととなりました。

卒業研究で忙しくなってしまいしばらく触れておりませんでしたが、またHyperWorks Student Editionを使って構造解析を習得してきます。

第1回 インストール
第2回 参考資料を手に入れる

第3回 一端固定梁の問題を解いてみる

今回は、材料力学の教科書でも扱われている一端固定梁の問題を解いてみました。このような問題を選択したのは、

  • 手計算でも解答を得ることが可能であるため、これと比較することでFEM解析により得られた結果の妥当性を判断しやすい
  • モデルが簡単であるため要する時間が短く心理的な壁が低い

といった理由からです。

1. 問題の詳細

図1に問題の詳細を示します。

図1 単純支持梁の問題

解析的解法により得られる解は以下のようになります。

引張曲げ応力の最大値

B点のたわみ量

 

2. 1次元要素を用いた解析

参考資料
  • 無料eブック – 有限要素シミュレーションの実践 p57-58,148-193
  • OS-T: 1000 Linear Static Analysis of a Plate with a Hole (OptiStructチュートリアル)
  • OptiStruct Reference Guide 「MAT1」,「1D Element」,「CBAR」,「PBEAM」,「PBEAML」
解析の様子
https://fast.wistia.net/embed/iframe/as9fcj89pp

1次元要素を用いた解析のみ雰囲気を知ってもらうために動画にしました。なるべく動画内ではどのような資料を参考にしたかを入れるようにしました。どのように資料を活用するかの足掛かりとしていただけたらと思います。

解析結果は表1のようになりました。変位、応力共に解析的解法の解と一致しました。今回練習のために要素数を50としましたが、応力の最大値、変位の最大値共に梁の端で生じるため1つの要素で応力の最大値及び変位は計算可能なはずです。

表1 1次元要素解析結果

要素数 変位 応力最大値 備考
50 4.17 mm 105 MPa  

今回学習した内容として印象的だったことを紹介します。

1つ目はHyperBeamの活用です。動画内でPBEAMLというプロパティを使用しました。このプロパティでは断面形状に関するデータが既に入っておりプロパティカード内で断面形状を定義することが出来ます。しかし、あえてHyperBeamを使用して断面形状を定義することで、図2のように断面形状を視覚的に知ることができ、間違いを防止することが出来ると感じました。また、既に定義された断面形状以外の形状も再現することが出来るため便利です。

図2 HyperBeam

2つ目は応力結果の表示についてです。1次元要素では断面内の様々な箇所の応力をコンター図で全て表示するのではなく、断面のある重要な箇所のみ、又は最大値のみ表示されます。今回は対称な断面を持つ梁を扱ったため上下で絶対値は変わりませんが、引張り応力と圧縮応力を分けて考える必要がある場合などは断面の各箇所の応力をそれぞれ表示させる機能を用いる必要がありそうです。

引張応力となっている部分の表示と圧縮応力となっている部分の曲げ応力表示 引張応力となっている部分の表示と圧縮応力となっている部分の曲げ応力表示
図3 引張応力となっている部分の表示と圧縮応力となっている部分の曲げ応力表示

 

3. 2次元要素を用いた解析

参考資料

解析の様子

今回、平面応力問題として要素に対して面外方向の曲げが加わるように解析を行いました。条件を変えて3回解析を行いました。表2に結果を示します。

先ず図4(a)のようなメッシングで解析を行ったNo.1について、拘束部分の中央付近で応力が最大となり、その値は102MPaで解析的解法より少しだけ小さい値でした。平面応力として問題を解いた影響や要素内で応力が平均化されており、一番高くなる部分の応力が表示されてないといった原因が考えられます。

次にメッシングの影響について調べるために、図4(b)のようにより小さい要素でも解析を行いました(No.2)。その結果、拘束部分の中央付近では105MPaとなり解析的解法と一致する結果となったのですが、応力分布が幅方向に均一ではなく、拘束部分の角で108MPaと不自然な最大値となりました。図1には定義されていない拘束条件が働いていると考えられますが、私の中で解決策は見つかっておりません。

他にもeブック(日本語verのp440)に記載されているバイリニア補間を用いて計算を行ったりもしてみたのですが(No.3)、あまり理解していないため詳しく書くことが出来ません。

今回、少し解析の条件や計算方法を変化させただけで結果が変わってしまうのを見て、確信をもってFEM解析を実行しその結果を取り扱う難しさを感じました。

表2 2次元要素解析結果

No. 要素数 変位 応力最大値 備考
1 800 4.15 mm 102 MPa  
2 20000 4.16 mm 108 MPa 真ん中では105 MPa
3 800 4.15 mm 104 MPa バイリニア補間

  • (a)No.1

  • (b)No.2

図4 応力結果表示

 

4. 3次元要素を用いた解析

参考資料

解析の様子

解析結果は表3のようになりました。梁の幅方向に無理な拘束が生じないように梁の幅方向の拘束は対称軸以外しなかったのですが、幅方向の応力変化が生じました。

表3 2次元要素解析結果

要素数 変位 応力最大値 備考
1600 4.15 mm 110 MPa 節点応力

  • 図5 要素応力表示

  • 図6 節点応力表示

今回の学習した内容で印象的だったことを紹介します。

1つ目はヘキサメッシュについてです。テトラメッシュよりも精度が良いとのことでこの要素を使ってみました。上述したHyperMeshチュートリアルを参考にすれば作成することが出来ます。私は2次元要素を作成した後、それをもとにしてヘキサメッシュを作成しました。この時の注意点として、2次元要素が残ってしまいますのでこれを削除することを忘れないようにしましょう。(最初、消し忘れて解析が出来ませんでした。)

2つ目は節点応力についてです。通常、図5のように要素内で平均化された応力が出力されます。これでは梁の表面で最大値となる応力が低く出力されてしまします。解決策として要素分割を細かくするという手もありますが、節点応力を出力することで梁の表面の応力を知ることが出来ます。これを知ったときはかなり感動しました。HyperWorksでの設定方法を図7に示しておきます。

節点力出力設定
図7 節点力出力設定

5. 最後に

自分が想像していたよりも解析的解法と最初に行ったFEM解析にはズレがありました。3次元要素での節点応力を知らずにいきなり複雑な問題を解いて低い応力を出力してしまうと大変です。始めに手計算できる問題を解いて、結果がおかしいと知ることが出来て幸いでした。まだ、要素分割数を理由なく決めてしまっているなど分からないことが多いので、もっと勉強していきたいです。

Student Editionユーザーは自分で様々な事を調べて解析を習得していかなければなりません。私も知りたい情報を得ることがかなり大変だと感じています。そこで今回の記事ではどのような資料を参考にしたかを記し、動画内でもその資料について触れています。皆さんにも資料の探し方の参考にしていただき、積極的に情報を得てHyperWorksを習得してほしいと思います。

以上で、<HyperWorksを使いこなすシリーズ~構造解析・最適化への道~>第3回記事を終わります。最後までお読みいただきありがとうございました。

無償学生版 Student Edition
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カテゴリー: HyperWorksを使いこなす, 学生支援

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