スポーツと物理学/身近な科学検証シリーズ
バスケットゴールのリングが激しいプレーの力に対抗できるように設計される以前から、バスケットボールの歴史には、ガラスを粉砕するような伝説的なダンクシュートがありました。伝説的なシャキール・オニールの「シャックアタック」は、彼の現役時代に使われるようになった造語です。彼は圧倒的な力と体格で、非公式に12.5個のバスケットボールのリングを破損し、バックボードを粉砕し、さらには支柱全体を倒したからです。2020年には、あるプロ選手がボールを激しくダンクし、リング全体を曲げてしまいました。さらに最近では、2023年2月4日の試合で、リングが曲がったためにプレーが43分も遅れるというアクシデントも発生しました。
NCAAカレッジバスケットボールトーナメントの真っ最中ということもあり、バスケットボールのことが頭から離れません。そこで、アルテアのシミュレーションツールを使ってバスケットボールのリングモデルを限界まで追い込み、バックボードが破損するまでにどれだけの力に耐えられるかを調べることにしました(現在の設計規定を念頭に置いています)。それだけでなく、「プレーヤーの方向、角度、体重、力が、バックボードの破損にどのように影響するのか?」や、「破損原因には、まったく別の変数があるか?」についても調べることにしました。
背景
NBAの前の世代では、ほぼ毎シーズン、選手がバックボードを粉々に壊していたようです。これは旧式の固定式リングが原因で、旧式のリングはバックボードに直接ボルトで固定されていたため、リングにたわみが生じると、ガラスが曲がって粉々になることがありました。プレーヤーがより大きく、より強くなり、より激しいダンクを放つようになると、バックボードの粉砕は公式戦で実際に起こることもあったようです。その一例として、このような状況をモデル化し、シミュレーションしたのが下のアニメーションです。
リングの設計変更により、バックボードへの荷重が制限されるようになり、バックボードの粉砕を防ぐことができるようになった。例えば、「ブレイクアウェイリム」は、1970年代半ばに、プレーヤーがバックボードを砕くことなくスラムダンクをできるようにするために導入され、現在では標準的なリング構造となっています。ブレイクアウェイリムは、リングの取り付け部分の内側にカバーされたバネがあるため、バックボードへのストレスを最小限に抑えながら、リングを下方に曲げることができます。また、バックボードの強度や構成も、このような危険な破損を防ごうと変化しています。近年では、文書化された例を数例(2019年のユーロリーグの試合と2021年のFIBAアフロバスケットの試合)しか見つけることができませんでした。これらの例でも、現代的なスタイルのバックボードガラスは内部で飛散するように設計されているため、破片がコートに飛び散ることはありません。
モデルのセットアップ
モデルのセットアップには、アルテアの設計・シミュレーションプラットフォームであるAltair® HyperWorks®を使用しました。Altair HyperWorksが提供する有限要素(FE)ツールからの形状生成機能を使って、純粋に形状のみのモデルを作成しました。
構造部分のほとんどが厚みの少ない大きなパネルで構成されているため、構造体の大部分はサーフェスを使ってモデル化し、構造体の小さな部分は、3Dソリッドを使用してモデル化しました。高品質のメッシュを確保するため、モデルには形状クリーンアップ処理を施しました。Altair HyperWorksには、あらゆる種類のサーフェスおよびソリッドの修復を可能にする専用ツールが用意されています。最終的なモデルは、以下でご覧いただけます。

バスケットゴールリングのAltair HyperWorks最終モデル
次に、シェル要素を使用してサーフェスをメッシュ化しました。一般的なモデルの形状から、三角形要素よりも精度の高い四辺形要素を作成できました。次に、四面体要素を使用してソリッドをメッシュ化しました。メッシュ化されたモデルを以下に示します。

メッシュ化されたバスケットゴールリングのモデル
次のステップは、メッシュ化されたパーツを接続することです。コネクターツールを使って、ボルト、溶接、ジョイント、スプリングをすべてモデリングできるようになりました。ほとんどのコネクターは1次元要素で作成しました。HyperWorksが提供する自動化ツールを使えば、モデル作成に要する時間も短縮できます。
強化ガラスの素材をモデルに割り当てたのは、ほとんどのバックボードが採用するガラスタイプだからです。残りの構造はスチールを使ってモデル化しました(実際の設計の詳細にはアクセスできませんが、今回はこれでうまくいきました)。
リングに圧力をかける
アルテアのエンジニアは、フロントガラスやスマートフォンの画面など、動的負荷がかかった状態での製品性能を評価するために一般的に使用されているシミュレーション技術Altair® Radioss®を使って、考えられる不具合の原因を楽しく調査しました。
プロのバスケットゴールリングの設計の詳細についてはすべて入手することはできませんでしたが、一般に公開されているビデオからおおよその設計を知ることができました。そこから、ガラスが周囲のフレームに比較的しっかりと固定されている場合に限り、リバウンドで発生する破損を再現することができました。
バックボードの粉砕を伴うRadiossシミュレーション
設置の詳細を知ることはできませんでしたが、ユーロリーグとアフロバスケットの試合のリングのデザインは、標準的なNBAのリングと全く同じではないにしても、非常によく似ていました。両方のビデオをよく見ると、デザインは同じではないものの、基本的なコンセプトは同じであることがわかります。リングは荷重制限ブラケットを介してアームに直接取り付けられています。ただし、どちらの場合も、昔のハイライトリールのように選手がガラスにぶら下がったときではなく、ダンク完了後にリングが上に跳ね返って割れています。荷重制限装置はプレーヤーがリングを引っ張ったときに破損を防ぐ役割を果たしますが、リングから手を放した後に破損を引き起こした場合の責任は荷重制限装置にあるのでしょうか?
もしこのような動作が一般的なものであれば、現在ではもっと多くの粉砕が起こっているでしょう。最近のプロの試合での「リムハング」ダンクでは、リムのリリースが遅くなっていることに気づきましたが、先に見た2件の破損のように、選手がリングを激しく跳ね返らせたケースがいくつかありました。
より柔軟なガスケットを使ってガラスを取り付ければ、シミュレーションでは故障を防ぐことができたため、取り付けが重要と考えられます。
バックボードが飛散しないRadiossシミュレーション
結論
現代のバスケットボールでは、バックボードが割れるのは、バックボードガラスにあらかじめ欠陥があるか、リングがバックボードガラスにあまりにもきつく取り付けられている場合だけかもしれません。いずれにせよ、最近のリングでバックボードを壊したいのなら(あまりお勧めしませんが)、リングにぶら下がって激しく跳ね返らせることで成功率が上がるでしょう。このような壊れ方でも、1970年代のゲームでよく見られたような、当時の柔軟性のないリングにプレーヤーが下向きの圧力をかけている間にガラスが粉々になるような壊れ方とは大違いです。
とはいえ、プロのリングやバックボードが割れるのは、極めてまれなことです。今日の大学やプロの試合では、世界最大、最強、最も運動能力の高いアスリートたちによるモンスターダンクがたくさん行われますが、バックボードを粉々にするほどではありません。いずれにしても、見ている分には楽しいが、バックボードが割れると選手の安全が脅かされ、試合が長時間中断される原因にもなります。ブレイクアウェイ リムのおかげでバックボードが割れる YouTube 動画が見つけにくくなったとしても、試合にとっては素晴らしいことだと私たちは考えています。とはいえ、「シャックアタック」のようなダンクは、その破壊的な悪名とともにこれからも語り継がれていくでしょう。
スポーツのためのアルテアのシミュレーション主導型設計の詳細については、https://altair.com/sports-jpをご覧ください。
![]()
*本ブログは、2023年3月21日に書かれた米国本社のDigital Debunkingシリーズ「How Difficult Is It to Shatter a Backboard?」を翻訳したものです。
カテゴリー: Altair Global Blog, 身近な科学検証




