CAEエンジニアは設計プロセスにおいてマルチフィジックスをどのように活用すべきか? – Thought Leader Thursday

*本記事は、米国本社のブログ『Innovation Intelligence』の投稿文を翻訳したものです。
*『Thought Leader Thursday』は、Altairの各分野のリーダーが木曜日に『Innovation Intelligence』に投稿している、記事シリーズです。

ウィキペディアによると、「マルチフィジックスは、複数の物理モデルや複数の同時発生する物理現象を含むシミュレーションを扱う計算機科学の一分野である。例えば、反応速度論と流体力学の組み合わせや、有限要素法と分子動力学法の組み合わせがある。マルチフィジックスでは一般的に偏微分方程式の結合系を解いている」とある。

これは、CAEエンジニアたちに何を示唆しているのだろうか。

様々な製品設計においてマルチフィジックスを考慮に入れる必要がある:エンジンは常に熱と振動に晒される;モータはトルクを提供するが、振動や騒音などの原因ともなる。

多くの実用的なプロセスやエンジニアリングデザインのプロセスは「シンプルであればあるほど良い」と言われている。エンジニアリングデザインのプロセスを単純化するのにこれまでは、各現象をチームや学問に分け、それぞれの専門家が別々に問題を扱うことで、相反する要求事項を満たす妥協設計案に辿り着くプロセスを用いていた。

しかしながら、いくつかの場合こうした方法では両立を図ることが難しかったり、理想解でなかったりする。前者では、複数の物理要素間の相互作用が鍵となる問題、例えば、航空機の不時着水やエアバッグの配置など構造解析と流体解析を解く必要がある問題が挙げられる。後者では、保守的な、つまり理想でない最適化製品の生成を防ぐために相互作用を考慮する必要がある場合である。特に、モータ設計のように2つの物理モデルがトレードオフの関係にあるケースが挙げられる。

より省電力、安全、軽量、そして環境に優しい製品と、Altair HyperWorksにあるようなより効率的なCAEツール、最適化ソルバーが必要で、その融合は、より高精度な計算機器の使用が可能となった今日、CAEエンジニアが容易にマルチフィジックスの問題を考慮した計算の実施を可能にしていると言える。

したがって、CAEエンジニアは、設計プロセスを可能な限りシンプルで高速かつ効率的に保ちながら、様々な側面の相互作用や複雑な物理現象を考慮に入れた最適設計を提供するという課題に直面している。

以下にマルチフィジックスの適用例を複数のアプローチで正確かつ、「シンプルであればあるほど良い」という理念に基づいて行った計算例を示す。

不時着水やスロッシングのシミュレーションは、より安全な構造物の設計において早期に開発されたマルチフィジックスシミュレーション問題の代表例といえる。これらの場合、構造物の応答や破壊の可能性は周囲の水の流れに依存し、構造物の挙動や変形に水の流れが大きく影響するのは明らかである。こうした問題の解法の発展はRadioss開発チームと研究機関の共同の成果によるものと言え、これによりシミュレーションの精度の高さが証明され、エンジニアの仕事をサポートするツールが導入された。例えば、水のメッシングは構造物の形状に依存せず、それぞれ別々にメッシングされ、お互いの関係はオイラーラグランジュ連成解析に基づいて計算される。

別の流体構造相互連成の例として、織物の変形と内部流体の挙動が同時に影響を受けるエアバッグの展開が挙げられる。正確な材料則により繊維回転含む織物の複雑な挙動を考慮しながら、展開時におけるエアバッグ内の流体の流れを有限体積法(FVM)により正確に表現する。

上記ケースにおいて、Radiossは正確かつ高速で、効率の良い解法を特徴とし、両問題の現象を同時に取り扱うことができる。近しい現象は空力弾性学でも存在し、構造物の周りの流体の流れと、構造物の振動の両方を考える必要がある。これは、定常状態における流体シミュレーションと高い精度をもつ翼の振動モデルの融合が必要で、HyperWorks 内、OptiStructAcuSolveのP-FSI機能を用いることで計算可能となる。さらに、HyperWorksの最適化技術を用いることで、空力性能を維持したまま質量と粗動両方を削減するウィングレットの最適化設計を実現できる。

複数の物理モデルを続けて計算することができれば、連続的結合が可能となる。以下に電磁場と構造や流体の融合が必要となるモータの設計を紹介する。燃料ポンプより生成される騒音の計算は次の2つのステップで実行する。最初に、流速を用いてモータのトルクやモータが構造物に与える力を計算する。そして、OptiStructでそうした力から騒音を計算する。全体のプロセスはHyperStudyでまとめて最適化でき、要求されたトルクを満たし、かつ騒音の最小化を実現するモータの設計が可能となる。

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3Dソルバーは多くの計算リソースを必要とし、特に最適化問題では多くの繰り返し計算となるため、常に実行できる環境があるとは限らない。そういった場合、1Dのシミュレーションが有効となる。一つあるいは複数の物理モデルが1次元の方程式や近似式で表現可能な場合、特に便利である。

以下の例では、ファーネス(炉)の冷却シミュレーションを、3Dの熱流体シミュレーションから熱伝導方程式に基づいた解析モデルと3D AcuSolveより特定したパラメータに置き換えて実行したものである。このケースでは、解析モデルはHyperWorksのシステムシミュレーションソフトウェアActivateにより作成され、繰り返し計算が実行された後、新たに導出されたデザインの性能をAcuSolveの3D CFDシミュレーションを用いて検証した。こうした計算プロセスは、1Dモデリングによる計算の速さと3Dシミュレーションによる精度の高さが要求されたときに最適な組み合わせであるといえる。

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最後に、マルチフィジックス問題をモデリングする方法は複数あるが、「古典的」な複数シミュレーションの組み合わせや連続的結合に加え、より速い1Dシミュレーションを用いて物理現象を部分的にあるいは全体を単純化し、現象の大まかな傾向を把握し、高い精度の予測結果を取得したいときに3Dのソルバーを用いることも可能である。

Altair のマルチフィジックスソリューションの詳細はこちらをご覧ください。

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カテゴリー: Altair Global Blog, Thought Leaders

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