*本記事は、米国本社のブログ『Innovation Intelligence』の投稿文を翻訳したものです。
*『Thought Leader Thursday』は、Altairの各分野のリーダーが木曜日に『Innovation Intelligence』に投稿している、記事シリーズです。
コンピュータについてよく言われる言葉として、「ゴミを入れればゴミが出てくる」というものがある。これは有限要素解析(FEA)を実施する時には間違いなくこの通りである。ここでは、読者のFEA結果が何かしらの意味を持つための方法について説明する。
適切な要素サイズを使う
これは、近年大きな問題ではなくなってきている。プリプロセッサはわずか数分で何百万もの要素を生成することができ、そうした膨大なモデルを問題なく処理するための高スペックなコンピュータも普及している。もしモデルのメッシュが粗いと、結果は正確性に欠けてしまう。さらに、要素サイズや形も問題となる。不適切な要素の形状(特に応力集中箇所)だと、誤った結果を導いてしまう。高剛性が必要とされる箇所についても同じことが言える。今日のプリプロセッサでは、表面要素を4分割したり、立方体ソリッド要素を更に8つに分割したりすることは比較的容易である。このより細かく切ったメッシュの結果と元の粗いメッシュの結果を比較したとき、結果に違いが出れば元のメッシュでは粗すぎることが分かる。この場合、より細かいメッシュが使用されるべきで、更に細かい分割にし、結果が正確な値に収束したか否かを確かめるべきである。
適切な数の剛体モードを得る
新たなモデルを見るときに最もやるべきことは、自由-自由(拘束を持たない)の固有値解析を行うことである。適切な数の剛体モード(通常は6)が得られるはずである。もし少なすぎるようなら、そのモデルは不適切な形でマルチポイント拘束(MPC)されていたり、特定の軸に対してバネ要素(CELAS)が設定されていなかったり、剛体要素が間違って使われていたりなどの問題が見つかるだろう。今日のFEAコードはGROUNDCHECKなどの診断機能があるため、不適切な剛体モードにつながっているモデリング上のエラーを指摘してくれる。エラーの原因を特定するもうひとつの方法は、要素ひずみエネルギーを出力し、ポストプロセッサで結果を確認することである。局所的に値が高いところが問題の原因となっているはずだ。
もうひとつの問題として、剛体モードが多すぎることがある。これはモデルのメカニズムに依存する。問題のあるメカニズムは、全ての剛体モードにおける変位の結果をポストプロセッサで確認することで特定することができる。
最後に、剛体モードがきちんと硬いことが重要である。これらのモードの周波数は0.05より小さくなるべきで、これよりも大きい周波数(特に0.2以上)を持つ剛体モードは何かしらのモデリングエラーが発生し、構造モードとして扱われる可能性がある。十分ではない剛体モードの場合、OptiStructにあるGROUNDCHECK診断を使ったり、ポストプロセッサ上で要素ひずみエネルギーの分布を確認したりすると良い。
問題の数値設定を整える
要素が柔らかすぎたり硬すぎたりする場合、不良条件となる可能性がある。桁外れの誤差をもつ解析結果にもつながるかもしれない。よくある事例として、2つの剛体要素を結合するために起こる双方の依存性の問題を対処するために、剛性の高すぎるバネを使用することなどが挙げられる。二重依存性問題は、各グリッドが剛体要素に依存しているために起こる。この時、剛性値は1.0E6~1.0E12の範囲内にあるべきである。多くのモデルで、1.0E15~1.0E19の値が見受けられるが、こうした高い値は、解析結果の精度が何桁もずれることにつながってしまう。高すぎる値は、OptiStructのPARAM, BUSHSTIF機能を用いることで全ての要素を自動的に削減することができる。
要素が柔らかすぎることも問題として挙げられる。これは細すぎる曲げ要素を有する場合によく発生する。表面を2Dのソリッド要素で表現することでソリッド表面に発生する応力値を取得するのが実用的であるが、曲げ剛性はに比例するため、厚さ0.001の要素は、1.0E-10のオーダーの曲げ剛性となる。これは特異行列やそれに近い状態になることがあり、これらの特異性が自動的にFEAプログラムで拘束されていない場合、精度の低い解析になる上、計算時間が長くなる。これは特に固有値解析(ランチョスやマルチレベル部分構造法による解析)で起こり得る。これらの薄い要素を曲げ特性や材料物性を変えることで膜要素にすることがポイントである。この作業は、OptiStructのPARAM, SHL2MEM機能を用いることで自動的に処理される。
流体-構造カップリング
騒音、振動、乗り心地(NVH)解析では、構造物のメッシュと、それに囲まれた空気のメッシュが互いに合ってないことが多い。これには、構造物のどの節点が壁面に掛かる各流体要素に影響されるかを決定する探索アルゴリズムがよく使われる。多くの場合では、必ずしも全ての流体面が構造物の節点と接触しているわけではない。これは下の図、青の要素により表される。
これらの面は「アコースティカリー(音響的)剛体」、つまり、音が空気に反射し返され、構造物に影響を与えないのである。ほとんどのFEAプログラムでは、各流体面が構造物とカップリングしていることをポストプロセッサ上で確認するための出力ファイルを掃き出す試し計算が可能である。例えば、OptiStructより自動的に出力される.interface ファイルをHyperMeshに取り込むことで、上の図のような結果を生成することができる。こうした計算の実行は、流体メッシュを維持したまま、構造物のメッシュを修正する度に繰り返し実行することが重要である。探索パラメータの調整や、流体領域のリメッシュをしない状態でカップリングが成功した例はほとんど見たことがない。
最後に
FEA解析で精度の高い結果を得るための注意すべき事項についていくつか論じた。要素サイズやその品質、剛体モードが適切な数であるかの確認、数値的に良好な状態であるかどうか、NVH解析では流体-構造物のカップリングが有効かの確認について取り上げた。こうしたことに注目すれば、より良い精度の解析結果を取得することができ、精度が確かでない時にも「デバッグ」する時間を削減できるだろう。最後のヒント: 解析より検出されたエラー等については必ず該当箇所を出力ファイルより探すこと。これは、その他に潜んでいるモデリングエラーの解決にもつながるかもしれない。
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