熱問題を制する新常識:マルチフィジックス解析による電子機器冷却の設計術

熱問題を制する新常識:マルチフィジックス解析が叶える電子機器のクールランニング2024年2月、米国消費者製品安全委員会(U.S. Consumer Product Safety Commission)は、過熱による火災や火傷の危険性を理由に、1,500万台以上のノートパソコン用アダプターのリコールを発表しました。これは、安全性に関する同様の警告が続いている中での新しい事例です。最近では、ベビーモニター、ノンフライヤー、マッサージガンといった多種多様な製品が、過熱の懸念からリコールの対象となっています。こうした事例は、電子機器の効果的な熱管理の重要性を改めて浮き彫りにしています。

とはいえ、その実現はますます難しくなっています。製品が複雑になるにつれ、従来の熱設計手法では、その要求に対応しきれなくなってきています。最悪の場合、時代遅れの熱管理手法によって致命的な障害が引き起こされることもあります。問題がそこまで深刻でない場合でも、不十分な熱解析や設計プロセスは、安全性や性能を損なうだけでなく、開発期間やコストの増加を招きます。

幸いなことに、設計チームが解決策を模索するにあたって、最新のマルチフィジックスかつマルチディシプリナリー(複合領域)なシミュレーション環境が、熱設計を大幅に刷新する可能性があります。この高度なツールは、熱管理の普及を実現し、極めて複雑な熱設計の課題を、これまでにないスピードとシンプルさで解決します。

冷却を維持するために

熱設計の基本原則は明快です。製品内の各コンポーネントには、安全に動作できる温度範囲が存在します。設計者は、それぞれのシステムや使用環境において、コンポーネントがその温度範囲を超えないようにしなければなりません。極端な例を挙げると、大気圏に再突入するスペースシャトルの表面温度は2,732°F(1,500℃)に達しますが、シャトルの外装材にとってこれは安全な温度です。一方、ロジックチップが同様の熱流束(熱の流れ)にさらされた場合、安全な温度上限はわずか257°F(125℃)であるため、かなりの冷却が必要となります。

もっと日常的な例としては、暑い晴天の日に、スマートフォンを窓辺や車内に長時間置いていた結果、自動的にシャットダウンした経験がある人も多いでしょう。これは、内部コンポーネントが安全な動作温度を超えた際に、デバイスを保護するための仕組みです。もしこの保護機構が作動するのが遅すぎれば、デバイスに損傷を与えるリスクがあります。逆に、作動が早すぎたり頻繁すぎたりすると、使い勝手が損なわれてしまいます。

熱管理の必要性自体は目新しいものではありません。また、過酷な使用環境も以前から存在していました。しかし、現在の電子製品設計はますます高度で複雑になり、技術革新のスピードも加速しています。ユーザーも、より小型でありながら高性能かつ多機能な製品を当然のように求めています。より多くの電流が、より高密度に配置されたコンポーネントを通じて流れており、これらが狭い筐体内の温度を上昇させています。一方で、設計者がコンポーネント配置を調整する自由度は狭められる一方です。

問題はそれだけではありません。現代のシステム内のコンポーネントは多様化が進んでおり、数十種類に及ぶ異なる材料や、数百種類に及ぶ熱負荷を考慮しなければなりません。個々のコンポーネントは、それぞれ異なる動作温度範囲を持つだけでなく、動作温度の上昇に伴って異なる動的な放熱特性を示します。さらに、冷却手段も空冷、液冷、気液併用冷却といった複数の方式が存在しており、設計の複雑性に拍車をかけています。

旧来の手法は時代遅れ

多くの設計チームでは、熱管理の問題を効果的に処理、検証する体制が整っていません。従来の設計手法では、経験や「勘」に頼る傾向がありました。しかし、そうした旧来のアプローチではもはや対応しきれません。さらに、多くの企業では、筐体設計部署が設計を完了させた後に、熱管理専門部署に引き継ぐという従来型のワークフローが採られています。熱設計の課題が増大するなか、こうした流れは「たらい回し」のような状況を生み出し、設計が部署間を行き来するうちに、数週間が過ぎてしまうこともあります。市場投入までのスピードが重視される今、こうした体制の見直しは急務です。

そこで活躍するのが、先進的なマルチフィジックスおよび複合領域のシミュレーション技術です。その名の通り、これらのツールは、固体部品、電気的な熱挙動(ジュール熱など)、そして数値流体力学(CFD)を単一の環境下で取り扱うことが可能で、複雑かつ多様な因子や変数を一貫してモデル化できます。Altair® SimLab®は、こうした要求をすべて満たす、プロセス主導型の電子システム設計(ESD)環境です。材料、荷重、冷却システムといった要素、さらにはその他の重要な物理現象もすべて取り扱うことが可能です。例えば、コンポーネントは単なる一様な「立方体」として扱われるのではなく、内部構造を持ち、それらの挙動を正確に反映することで、より信頼性の高い熱シミュレーションが実現できます。熱伝導、対流、放射といった様々な熱伝達形態を正確かつ信頼性高くシミュレーションすることは、設計初期段階での妥当性確認において不可欠です。

とはいえ、複雑性への対応は戦いの半分に過ぎません。多くの電子設計チームは、CFDなどの領域に関する十分な経験を持っていません。より良い製品をより迅速に市場投入するためには、SimLabのように直感的で使いやすいシミュレーションワークフローを備えたソリューションが求められます。SimLabのユーザーは、たとえCFD解析担当者や熱設計者でなくても、数日以内に本格的な電子機器の熱モデルを構築できるようになります。

その鍵となるのは、SimLabが提供する統合されたインターフェースと、プロセス指向の専用ワークフローです。メッシュ生成や形状の事前準備といった時間のかかる作業を省き、モデルのインポートが可能です。設計の修正も迅速に反映、評価できるほか、設定や計算の多くは高度なバックグラウンドアルゴリズムによって自動的に処理されるため、入力すべきパラメータは最小限に抑えられています。そして、直感的なGUIにより、使いやすさと、結果の詳細度・精度における卓越性が両立されています。

信頼性の高い開発プロセス

高度で使いやすい熱シミュレーションは、新たな開発プロセスへの道を切り開きます。電子機器の設計者や筐体設計チームは、熱管理に対してこれまで以上に大きな責任を担うことが可能となり、熱設計チームとの非効率的なやり取りに終止符を打つことができます。多くの組織において、熱設計には十分なリソースを割いているとは言えませんが、これらのツールによって、より多くの人が迅速な熱シミュレーションとそれに基づく設計修正を自ら行えるようになり、ボトルネックの解消につながります。また、より多くのメンバーが、コラボレーティブな環境下で設計のバリエーションを試行できることで、最適なソリューションの特定がより迅速かつ容易になります。

このアプローチは、従来手法よりもはるかに高精度な熱シミュレーションを提供するだけでなく、開発スピードも向上させます。まず、シミュレーションにより物理試作や物理試験の必要性が大幅に削減されます。さらに、製品が市場に出た後も、過熱、致命的な機能障害、性能・信頼性・安全性の問題といったリスクを最小化できます。その結果、メーカーや設計者は、リコール、保証対応コストの増加、ブランドイメージの毀損といった問題に対して、より強力な防御策を手に入れることができます。

信頼性の高いシミュレーションは、過剰設計の回避にも貢献します。熱設計の複雑化に直面して、一部の組織では大幅に余裕を持たせた安全マージンを設定するようになっていますが、これは必然的にエンジニアリングコストの増加を招き、製品の競争力や利益率を損なう要因となります。正確な熱シミュレーションツールを活用すれば、設計チームは現実的かつ合理的な設計パラメータに基づいて自信を持って開発を進めることが可能になります。

収束するトレンド

熱設計の課題を解決する手段として、マルチフィジックスシミュレーションの導入が進んでいる背景には、より広い視野での技術トレンドの変化があります。今日の電子製品開発において成功するためには、完全に統合された設計手法がますます求められています。熱管理、構造信頼性、CFD評価など、あらゆる設計要求は、同じコラボレーティブな設計環境で一貫して取り扱う必要があります。さらに、設計の後期段階で変更を行うと、コストや納期への影響が大きいため、シミュレーションは設計の初期段階で行うべきです。

SimLabは、こうした設計思想のもとに生まれた製品です。SimLabは、シミュレーション・設計プラットフォームAltair® HyperWorks®の一部として、柔軟かつ効率的なライセンスエコシステム内で利用できる数々のツールの一つに過ぎません。現在の電子システム設計(ESD)における熱的課題や、その他のマルチフィジックス設計ニーズに取り組む設計者にとって、SimLabは、より冷却効率の高いソリューションを実現するための、最も簡単で効果的な選択肢です。

SimLabの詳細については、https://altairjp.co.jp/simlab をご覧ください。

※本ブログは、米国本社の「Cool Runnings: How Multiphysics Simulation is Rewriting the Rules of Electronics Thermal Design」を翻訳したものです。

 

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カテゴリー: Altair Global Blog, 製品情報

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