建築・工事現場では、ひとつの事故が人命に直接関わるため安全第一が基本です。しかし、労働人口が減少する日本では、高齢者や日本語を母国語としない労働者、また非熟練者の労働者割合が増加傾向にあり、事故が起きやすい労働環境になってきています。そこで、事故を未然に防ぐ取り組みはもちろん、事故が起きる過程や想定される事故が起こってしまった際に人体にどのような影響を与えるか、それらを事前に予測するために生体工学研究の応用がますます求められるようになってきました。
下の図は、ヘルメットを着用していない状態で、重さ20KgのH鋼が頭部に落下した状況をシミュレーションした結果です。頭蓋骨に衝撃があるのは当然ですが、首が曲がり、下顎骨から背骨、大腿骨まで衝撃が伝わっていることが確認できます。
人体モデルHUMOSを使用した頭部への建材落下シミュレーション(全身)
人体モデルHUMOSを使用した頭部への建材落下シミュレーション(頭部拡大)
建築現場で起こる事故を実験で再現することは難しいですが、衝撃解析ソルバーAltair Radiossとバーチャルな人体モデルデータHUMOSを使ってシミュレーションすることで、想定される事故の要因分析や人体への影響を予測できます。上のような頭部への落下だけでなく、肩への衝撃、墜落・転落した際に命綱がどのように人体に影響するかなども同様に分析でき、例えば、転倒してぶつけても大きな怪我に至らない足場の製品開発に繋げるなど、人体モデルデータを使用した衝撃解析の活用が広がっています。


カテゴリー: 事例