解析よもやま話【第40回:リコーダーの音響解析】

図1:アルトリコーダー(下)、ソプラノリコーダー(上)

以前ギターの音響解析の話をしましたが、今回は個人的にギター同様演奏を趣味にしているリコーダーを取り上げてみました。図1は我が家にあるアルトリコーダー(大きい方:奥さん用)とソプラノリコーダー(小さい方:私用)です。リコーダーは学校の音楽の授業で使われているのでどなたも一度は吹いたことがあるのではないかと思います。管弦楽や吹奏楽で使われている金管楽器や木管楽器はどれもとりあえずまともな音を出すだけでも苦労する(ちなみに私は中学から高校にかけて吹奏楽部でユーフォニアムとチューバを吹いていました)のに対して、リコーダーは吹けば普通に音が出るのでとっつきやすいのが魅力です。また、高校の物理では気柱共鳴の例として、音孔を全て塞いだ状態では管内で発生する共鳴モードの波長が長くなるので低い音が鳴り、順番に音孔を開けていくに従って波長が短くなるので高い音になっていく、という理屈を習ったことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。

図2:レ#の運指(下)、レの運指(上)

確かにソプラノリコーダーの場合、下のドから上のドまでの音階を吹くには基本的に下から順番に音孔を開けていくので理屈通りなのですが、上のドからさらに高い音へ行くと疑問が生じてきます。例えばレの音は図2の上側のように音孔を1か所塞ぐのですが、その上のレ#の場合は下側のように5か所塞ぐので普通に考えたら音が低くなりそうなものですが、実際には半音高くなります。さらに高い音でも何か所かこのような運指があります。なぜかと思ってネットで調べてみたのですが納得できるような解説が見当たりませんでした。そこでAltair OptiStruct音響解析機能を使ってどういう現象なのか調べてみることにしました。

図3:リコーダーの内部空間のモデル

図3は、リコーダーの内部空間をモデル化したものです。右端が根元で左端が先端です。周りの空間もリコーダーを囲む楕円体としてモデル化されていますが、非表示にしています。赤く示されている窓部(根元近くのエッジが付いた発音部)、音孔、先端部で周りの空間とつながっており開口部を表しています。各音孔と周りの空間との接続をオンオフすることで音程を変化させます。このモデルに、OptiStructの音響周波数応答解析機能で窓部に一定の音響パワーを入力し、同じ窓部の音圧応答の周波数特性を見ることにしました。

機械学習を活用して異常データを収集しよう

図4:同じ窓部の音圧応答の周波数特性(OptiStruct)

計算結果が図4です。青線がド、赤線がレ、緑線がレ#の時の周波数特性です。コンター図はピークにおける管内の音圧分布を示しています。管や穴の寸法を正確に測定したわけではないため音程と周波数の絶対値との関係は正しくありませんが、順番に音程が高くなっていく現象は再現できました。また、当初の疑問点の原因もこのグラフから分かります。ドとレは一次の共鳴モードになっているのに対してレ#では一次の共鳴モードは1175Hz付近の低いところにあり、1450Hz付近にある二次の共鳴モードが実際の音として鳴っているものと考えられます。つまり、レからレ#で塞いでいる音孔が増えたので一次の共鳴周波数は下がったものの、倍音である二次の共鳴モードの方が優勢なためこちらの周波数で鳴っているわけです。コンター図からも、一次よりも二次の共鳴モードの方が音源である窓部に近い部位で音圧が高くなっており、より励起されやすいモードだと言えます。

なお、今回の解析モデルの元にしたリコーダーは高校時代に吹奏楽部で一緒にユーフォニアムを吹いていた同級生が一本一本手作りで製作しているものです。子供のころのリコーダーを思い出してまた吹いてみたいと思った方はぜひ覗いてみてください(スズキ木製リコーダー)。

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カテゴリー: 解析よもやま話

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