衝突したほうも、されたほうも守りたい
衝突物から何かを守りたい場合、衝突される側をとにかく強くすれば良いです。一方で、衝突物を守りたい場合、衝突される側をとにかく弱くすると良いです。しかし、例えば自動車の衝突のように、衝突する側、衝突される側、どちらも守りたい場合はどうでしょうか?この場合、衝撃保護部材は、強すぎず、弱すぎもしない、絶妙な強さが求められます。本例では、衝突解析にAltair Radioss、絶妙な強さの探索にAltair HyperStudyを使用し、その絶妙な強さとなる衝突保護部材の設計を探索します。形状こそ単純ですが、非常に実践的な例題です。
評価値は加速度と変位
衝突体の加速度が小さければ、衝突体へのダメージも小さいと判断できます。また、衝突体の変位が小さいということは、衝撃保護部材への突入量が小さいということで、衝突された側のダメージが小さいと判断できます。
よって、加速度や変位を“望ましい値”に収めるように設計します。今回は、以下のような8種類の設計変更パターンがあるとします。
設計パラメータ① フィレット半径:15~25mm
設計パラメータ② 外側部材長さ:280~360mm
設計パラメータ③ 外側部材幅:160~240mm
設計パラメータ④ 内部板配置幅:120~200mm
設計パラメータ⑤~⑧ 4つの部品の板厚:1~2mm
設計 パラメータ |
HyperStudy パラメータ |
HyperStudy 最小値 → 設計最小値 |
HyperStudy 最大値 → 設計最大値 |
フィレット半径 | Radius | -1 → 15mm | 1 → 25mm |
外側部材長さ | length_external | -1 → 280mm | 1 → 360mm |
外側部材幅 | width_external | -1 → 160mm | 1 → 240mm |
内部板配置幅 | length_internal | -1 → 120mm | 1 → 200mm |
外側スキン板厚 | th_external_skin | 1 → 1mm | 2 → 2mm |
内側スキン板厚 | th_internal_skin | 1 → 1mm | 2 → 2mm |
外側フランジ板厚 | th_external_flange | 1 → 1mm | 2 → 2mm |
内側フランジ板厚 | th_internal_flange | 1 → 1mm | 2 → 2mm |
HyperStudyにおけるパラメータと設計パラメータの対応表
直交試験で重要パラメータを洗い出す
いきなり最適化をやるのも良いのですが、このように設計変数が多い場合、直交試験を行って、検討すべきパラメータを洗い出すのも一つの手法です。各パラメータを3レベルとして27回の試験を行いました。
パレートプロットにより、内部板配置幅、内側スキン板厚、外側スキン板厚、外側部材幅の4つのパラメータが80~90%の寄与をしていることが分かります。この4つを重点的に検討する必要がありそうです。
寄与率の高い上位4つのパラメータに絞る
最適化でちょうどよい設計案を探索する
この課題では、加速度と変位が相反する関係になると予測できますが、例えば、変位を17mmに抑えた場合加速度はどれくらいになるのか、というようなことまでは分かりません。このような場合は、変位と加速度をともに最小化するという、多目的最適化が便利です。
今回は、先ほど洗い出した4つの重要パラメータだけを最適化してみます。反復回数は50回です。
HyperStudyで重要なパラメータのみを最適化する
多目的最適化を行うと、このように性能の限界を示すパレート図が得られます。これは、今回の設計でどのあたりを目指していくのかという良い指針になります。
多目的最適化の結果
内部板配置幅の大きさに応じて丸の大きさを変えた図
3つの最適解を確認。内部板配置幅が現象をうまくコントロールしていることが分かります。
設計業務に使える1Dモデル化
HyperStudyがDOEや最適化に使った大量の計算結果からエクセルによる1D予測モデルを作成します。実際の設計業務において、最適解をそのまま使えない場合も多いと思いますが、この1Dモデルですばやく結果の予測値を知ることができます。
このお話はAltair HyperWorksに付属する例題をアレンジしたものです。HyperWorksご購入後、すぐにお試しいただけます。
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