解析よもやま話 【第31回:強化繊維の配向】

解析よもやま話 【第31回:強化繊維の配向】

射出成型で製造される樹脂部品には、射出時に短い繊維(グラスファイバー等)を混ぜて強化することがあります。このような部品の強度を精度良く予測するには、

  1. 母材となる樹脂に繊維が混ざった状態、かつ
  2. 繊維の配向(主な向き、ばらつき具合)を考慮

した材料特性で計算することが重要です。

どのように計算するのか、また、この2つの予測を行わなかったらどのような予測になってしまうのか、引張り試験で説明します。

正しい強化繊維の強度予測

まずは樹脂に繊維が混ざり、繊維配向も考慮する正しい強度予測方法からご紹介します。今回は、ダンベル型試験片のような形状の単純な引張り試験を行います。

yomoyama31_01

材料特性に関する予測を行うMultiScale Designerと樹脂部品形状でのシミュレーションを行うRadiossを使用し、連成解析を行います。また別途、繊維配向テンソルというものを射出成型シミュレーションツールから取得しておきます。

① 繊維配向

表と裏は繊維が引張り方向を向いていて、板厚の中心では半分くらいが引張り方向と直角に向いています。

yomoyama31_02試験片の繊維配向
(繊維配向テンソルを可視化する方法はユーザーフォーラムをご覧ください)

② 繊維の形状と樹脂に対する比率

左図の半透明の緑部分が母材の樹脂、黄色が繊維のモデルです。

yomoyama31_03yomoyama31_04繊維の形状と樹脂に対する比率(長さが直径の約17倍、繊維が約18%)

③ 材料

樹脂と繊維の材料特性とSSカーブは以下の通りです。

yomoyama31_06樹脂の材料特性(E=4000MPa、ν=0.3)

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樹脂のSSカーブ

yomoyama31_07繊維の材料特性(E=70000MPa、ν=0.3)

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繊維のSSカーブ

以上の条件で計算を行うと以下のような結果になりました。

赤いグラフ
少々面倒ですが、これが繊維とその配向を考慮した“正解”の計算結果です。

母材となる樹脂に繊維が混ざっていない場合

試しに、樹脂に繊維が混ざっていない等方性材料で計算してみます。材料がよく分からなかったということにして、適当にヤング率7000MPa(普通の樹脂よりちょっと強い感じ)で、次のような応力-降伏ひずみ線図の材料を使ってみます。塑性ひずみ 0.3あたりで破断させているのは、ある程度伸びたところで破断させないと、計算が不安定になってしまったためで、特別な理由はありません。

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仮想の材料特性

結果は、こんな風に真ん中から割れ、ピーク荷重は3200N弱となりました。

yomoyama31_11yomoyama31_12

はじめに計算した材料特性と繊維配向を考慮した正解バージョンと比較してみましょう。初期の立ち上がりはまずまず一致していますが、ピーク荷重が正解の半分くらいしか出ません。これだとあまりにも強度を低く見積もってしまいます。

 

yomoyama31_13樹脂に繊維が混ざっていない材料の場合は強度が低すぎる

繊維配向を考慮しない場合

次に、繊維強化樹脂の材料特性は考慮するけど、繊維配向を考慮しない場合も検証してみます。繊維強化樹脂の材料特性はMultiScale Designerで予測しますが、繊維配向は考慮せず、材料座標系を引張り方向にするだけです。物理的に言うと、すべての繊維が完全に引張り方向に揃っている状態ということになるでしょう。

yomoyama31_14繊維配向を考慮しない場合のFS線図

先ほどと同じように、正解と比べてみます。定性的にはよく似たグラフになりましたが、ピーク荷重で7000N程度出ており30%近く高くなってしまっています。強度を高く見積もりすぎてしまいました。

yomoyama31_15繊維配向を考慮しない(繊維が引っ張り方向に揃っている)場合は強度が高すぎる

これらの結果から、材料特性だけでなく、繊維配向まで考慮しなくてはいけないということがお分かりいただけたと思います。

 

繊維配向まで考慮する利点① 正確な結果が得られる

はじめに行った繊維配向まで考慮した計算結果から応力コンターを見てみましょう。今回は、板厚中心で繊維があまり引張り方向を向いていないので、応力を負担しないという特徴が出ています。また、全体的に繊維がいろんな方向を向いているため、単純にすべての繊維が引張り方向を向いているものに比べると応力は低めです。繊維配向まで考慮すると、正しいFS線図が得られるだけでなく、このように細部まで評価することができます。

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繊維配向まで考慮する利点② パラメータ変更だけでさまざまなケースを検討できる

正確という以外にも利点があります。樹脂や繊維の特性が多少変わっても、繊維の配向はあまり変わらないだろうという仮定が必要ですが、

  • グレードの違う繊維を入れた場合の予測
  • 繊維の長さを変えた場合の予測
  • 繊維の含有率を変えた場合の予測

などの検討が、MultiScale Designerのパラメータをちゃちゃっと変えるだけで行えます。樹脂流動解析をやり直す必要がないのが手軽です。

試しに、先ほどまで使っていたE=70000MPaの強化繊維を、グレードの高いE=85000MPaのものに変えたらどうなるかというのをやってみました。

yomoyama31_17繊維のグレード比較もパラメータを変更するだけ

 

参考情報

本資料はAltair Connectからダウンロードできる4点曲げ例題をアレンジしたものです。ご購入後、すぐにお試しいただけます。

 

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