以前書いた「線形か非線形か」という記事の続きです。前回は静解析について記しましたが、今回は振動解析を例に挙げたいと思います。今回これを取り上げた理由は、「接触を考慮した固有振動解析はできますか?」というお問い合わせをよくお受けするからです。
結論から言うとできません。それは接触という非線形現象と、固有振動という線形現象は両立しないからです。簡単な例として以下のようなモデルを作ってみました。
これは長方形シェルの一端を固定し、もう一端は固定されたソリッドのブロックと接触させたモデルを斜め下から見ています。シェルとソリッドの間は接触(Contact)または固着(Tied)とし、シェルの中央部にインパクト荷重を負荷してOptiStructで計算を行い、荷重点の応答を見てみることにします。接触(Contact)は非線形、固着(Tied)は線形の現象となります。
こちらが計算結果です。横軸は時間、縦軸は変位量でプラス方向が接触する方向、マイナス方向が離れる方向です。接触(Contact)条件の場合、荷重負荷のあとブロックから離れた状態で数周期振動したあと、ブロックと接触して跳ね返されるため不規則な振動を繰り返しています。一方固着(Tied)の場合は、変位量ゼロを中心とした一定周期の振動が発生しており、固有振動として捉えることが可能です。
固有振動解析というのは、構造物固有の振動特性を正弦波で表現する手法ですので、接触によって引き起こされる非線形な振動は対象とならないことが分かります。どうしても接触を考慮したい場合は、今回のように非線形過渡応答解析で対処することが可能ですが、大規模なモデルでは非常に時間が掛かります。
実際の構造物が変形する現象は、厳密にはほとんどが非線形と言えます。しかし、そこにあまりに拘っていると本来の目的である製品開発業務の遂行に支障をきたしてしまいます。実際の製品とその使用環境を検討した上で考慮が不要な部分は簡略化し、必要十分な計算精度で解析を行うのが大事なことだと思います。
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