2015年8月18日にAltair JapanのFacebookへ投稿された記事の転載です。
アルテアの中川です。
今年はホンダからS660、マツダからロードスター、と新しいライトウェイトスポーツカーが発売されてスポーツカー好きの自分としてはとてもうれしく思っています。しかし、個人的に少し残念なのが両車ともオープンモデルしか無いところです。オープンエアモータリングの気持ち良さはよく分かるのですが、より軽量なクローズドボディを基本にして欲しかったと感じています。「軽くて強い」を仕事にしていることもあり、どうしても重さが気になってしまうのです。オープンカーにすると重くなる、というのは自分の中では当たり前のことだったのですが、先日飲み会でそう発言したら「えっ、屋根がないのにどうして?」と聞かれてしまい、どうやら当たり前ではないらしいことに気づきました。そこで今回はこれを題材にしてみたいと思います。
自動車の車体を設計する上で高い剛性を確保することはとても重要なのですが、屋根がないと大幅に剛性が下がります。しかし、どれくらい下がるのか、感覚としては分かるものの数字で確認したことはありませんでした。そこで公開FEMモデルを使ってOptiStructで計算を行ってみました。図は車体をねじった場合と曲げた場合の変形図を屋根の有無で比較したものです。どちらも変形の拡大率は同じにしてあるので、屋根の無いモデルは見るからに変形が大きいことが分かります。荷重点の変位量で剛性を比較してみると、屋根の無いモデルは、屋根の有るモデルと比較してねじりでは1/12、曲げでは1/2.2となりました。屋根が無いだけでそんなに変わるのか、と思うかもしれませんが、ドアは車体剛性にはほとんど効かないので、屋根が無いと車体下部構造だけで支えることになるからです。屋根を取り除くことで11Kg軽くなりましたが、これだけの大幅な剛性低下を補うために補強を追加したら逆に相当重くなる、ということが分かると思います。販売量があまり期待できないスポーツカーに2種類のボディを用意するのが難しいことは承知していますが、軽量で性能を追求したクローズドボディと、多少性能が低くてもオープンエアの気持ち良さを取るオープンボディの両方を用意して欲しい、というのがユーザーの立場でのわがままでした。
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カテゴリー: 解析よもやま話