HyperWorksを用いた工学院大学ソーラーカーの製作(7)トポロジー最適化による肉抜きと軽量化

オーストラリアの赤い大地を疾走する工学院大学ソーラーカー

昨年末、NHKの「超絶 凄ワザ!」でも取り上げられ、2017年10月にオーストラリアで開催されたBridgestone World Solar Challengeで、悪天候のために半数以上がリタイアする中、工学院大学ソーラーチームは見事7位の成績を収めました。斬新なソーラーカー“Wing”の開発になぜ、どのようにHyperWorksが用いられたのか、詳しく紹介します。

10. トポロジー最適化による肉抜きと軽量化

足回りは、図13~16のように、フロントがナッハラウフ配置、マルチリンク、プルロッド式サスペンション。リアがリジット式、マルチリンク、4輪操舵搭載の構成となっています。

足回りの構成 - 工学院大学ソーラーカー

 図13 足回りの構成

工学院大学ソーラーカー足回りISO図

 図14 足回りISO図

Kogakuin-BWSC2017_wing_frontunder

 図15 フロント足回りの挙動

Kogakuin-BWSC2017_reaback

図16 リア足回り挙動 左:背面図、右:上面図(リジット式、マルチリンク,4WS)

とてもユニークな足回り構成となっており、車体形状、車両運動性能を考慮した足回りの統合設計によりこの構成が決定されました。足回り開発の詳細はこちらの動画をご覧ください。

構成部品の中で大きい金物部品は、図17、18の Inspire によるトポロジー最適化を用いて必要な剛性を確保し、かつ軽量化を図りました。

Kogakuin-BWSC2017_uplight

図17 アップライト最適化結果

Kogakuin-BWSC2017_uplight_result

図18 アップライト最適化結果

「突き上げ力」「制動力」「横力」の3 つの外力に加えて、タイヤ荷重部と車軸取り付け部とのオフセットによるモーメントを荷重条件に考慮しました。

Kogakuin-BWSC2017_uplight_VonMises

図19 フォンミーゼス応力図(アップライト)

トポロジー最適化は、既存の考えにとらわれずに最適な形状を模索するために使用しています。リブ配置や肉抜き箇所は結果を参考にして設計者が考え、応力(図19)と変位を再確認して最適化を繰り返し作業しています。複数部品がASSYされてユニットを形成するため、ユニットの設計意匠を優先します。

Kogakuin-BWSC2017_uplight_final

図20 アップライトの最終形状 ISO図

たとえば、アップライトは車軸が組み付くため、双方の変位を合算して足回りジオメトリに影響しない変位を優先します。このようにトポロジー最適化を参考として、ユニットの意匠と設計者の意図を優先するようにしています。

Kogakuin-BWSC2017_reabeamfinal

図21 リアビーム構造体の最終形状 ISO図

最終的には、加工性を考慮したモデルを作成します。例として、図21 のリアビーム構造は中央のbox型パーツをコストと加工時間がかかる一体削りではなく、6枚の板状の部品を多数のM4ねじ締結により圧力一定で組み上げ、コスト低減と加工時間の短縮を図りました。

Kogakuin-BWSC2017_uplightfinalISO

図22 アップライトの最終形状

Kogakuin-BWSC2017_uplightfinalISO

図23 アップライトの最終形状

次回は、HyperWorksを利用してみた感想と今後の目標を述べます。

CFRPボデー製作 <<  >>  HyperWorksを利用してみて&今後の目標

アルテアエンジニアリングの学生向け活動支援について

アルテアは、学生フォーミュラ、ソーラーカーレース、シェルエコマラソンなどに出場するチームに対し、設計・CAE環境であるHyperWorks(ハイパーワークス)のライセンスおよび技術サポートを無償で提供しています。学生の皆様に設計段階でのシミュレーション活用の有効性を実感していただき、将来社会人になられてからもシミュレーション主導による製品開発プロセスを推進されることで、日本の製造業の力をより一層高めていく一助となることを目指しています。

アルテアの学生活動支援

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カテゴリー: 事例, 学生支援

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