6. 極薄の羽の積層計画
車体設計にあたり、一番の課題となったのは車体上部に設置する太陽電池の羽の積層です。極薄、軽量、高剛性な羽の構成を検討するためにHyperMesh、OptiStructを用いた構造解析を行い、解析から求めた応力や変形のデータをもとに、最適な積層構成を計画しました。羽の積層構成を検討するにあたって、ソーラーカーが130km/hで走行した際に羽がどのような空気力を受けるのか明らかにし、構造解析を行いました。空気力を求めて入力荷重とし構造解析を行ったことは、本設計のユニークな点だと考えています。
図5 羽の解析結果(縦方向の補強UD材なし)
剛性解析は補強梁に高弾性UD (Uni-Direction、単方向性繊維)を1plyしたものと2plyしたもの、梁位置の違いで数パターンのモデルを用意して羽の変形量と応力集中の箇所を確認しました。図5の補強梁を2plyしたモデルは最も変位が少ない結果となりましたが、重量は1kgほど重くなります。この積層構成でも100km/h以上の速度で走行した場合に加わる力は羽を破壊するほどのものではないと判断しました。しかし、高速域での羽振動を抑えるために変形をどれだけ抑えられるかが課題になり積層構成を再検討しました。
図5の解析結果では左右のステーの間に応力が集中していることがわかります。風を受けた羽が下方向に垂れようとした際にステーを支点に変形するためと考えられます。補強は斜めと短手方向にしか配置しておらず、長手方向を支える補強を入れていませんでした。この考察からply数を増やすよりも応力集中の箇所に補強を入れエネルギー分散を狙った方が効果的に変形を抑えることができると考えました。追加補強で変形に対して効果があると判断できれば、ply数を減らして軽量化することができます。
図6 羽の解析結果(縦方向の補強UD材あり,1kgの軽量化となった)
車両中央の長手方向に補強を入れて再び解析した結果を図6に示します。中央に追加した高弾性UD材の補強が効果を発揮して、羽が変形しようとするのを支えていることが分かります。左右のステーの間と斜めのUDに集中していた応力を分散することができました。
今回の積層構成では、補強のUD材を2plyしたパターンよりも1kgほど軽量化できました。これまでのパターンの中で最も重量と剛性の取り合いがうまくいった構成だといえます。この最適化には、HyperMesh、OptiStructを用いています。
次回は、「フラッター現象の解析」について解説します。
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