オーストラリア アデレードのゴール 2017年10月 BWSC2017
1. 工学院大学ソーラーチームとは
工学院大学ソーラーチームは、全学部、全学科から300名以上の学生が所属する学生団体です。横断的専攻の学生が主体となり、理工学の創造活動を通して、自らの成長と自立、チームワーク力を育成するプロジェクトに取り組んでいます。 2年ごとにオーストラリアで開催される約25ヶ国から約45チームが集結する世界最大級のソーラーカーレース、Bridgestone World Solar Challenge(BWSC)に参戦しています。チームは2009年に設立され、これまでに国内大会で大会新記録の達成と3度の総合優勝、世界大会で準優勝などの成績を収めています。2017BWSCは、稀にみる気候条件の悪い大会となり、半数以上のチームがリタイアするなか、世界7位の成績を納めました。また、レースのみではなく社会貢献活動にも参加し、持続的な社会、エネルギーの有効利用、理工学の先端技術を、様々なイベントを通して広く伝える活動もしています。
BWSC2017 工学院大学ソーラーチーム ショートムービー
2. チームの理念、ビジョン、ミッション
チーム設立時に理念、ビジョン、ミッションを掲げました。理念は『50年後の未来を考えた地球の持続的利用』、ビジョンは『人と自然の高度なサイエンスにチャレンジ精神をもち挑戦する』、ミッションは『独創的かつオンリーワンの車両を製造する』です。【右倣への発想をやめて、オリジナルに徹底する】というフィロソフィは、先輩後輩の年代が変わっても引き継いでおり、通常のソーラーカーの意匠や特徴とは違う独創的なソーラーカーを製作しています。
2017製作 工学院大学ソーラーカー 4号機 Wing
3. HyperWorks導入のきっかけ
チームの特長は、写真からも分かるとおり、独創的な車両を製作していることです。車体の曲線や意匠は、空気力学的に大きな意味があります。この車両は太陽電池を施工する極薄の羽が、ボデーから浮いている変わった構造をしています。
図1 自然界模倣のアイディア
図1は、ロアボデーが発生する空気の流れ(流線)をつないだ面で形成した羽のアイディアです。羽の末端厚みはわずか3mmの極薄の羽で、見えない空気の流れを3D形状にしたことで羽自身の空気抵抗を可能な限り最小化しようとした斬新なアイディアです。チームは自然界模倣(Nature morphing)を、自然界がデザインした意匠を人間がデザインする人工物に組み合わせる新しい取り組みと考えています。車体の性能を最大限引き出すためにはCFRPボデーを最適化し、羽の形状・厚みを完全に再現して、軽量かつ高剛性であることが求められ、これらの点を達成するために、HyperWorksが大いに活躍しました。
また、コンポジット企業である帝人グループ(株)GHクラフト様のご指導のもとで複合材料研究を進め、学生チームが産学連携の技術交流を行う上のコミュニケーションツールとして非常に有効でした。
4. 導入事例
以下のような広い分野の設計にHyperWorksを利用しました。
- CFRPボデー構造と積層計画
- 極薄の羽の周波数解析(フラッター現象の解明)
- 安全性の証明
- トポロジー最適化による金属部品の軽量化
- CFRPと金属の接着面積の最適化
次回からは、これらのうちの代表的な活用事例を解説します。
アルテアは、学生フォーミュラ、ソーラーカーレース、シェルエコマラソンなどに出場するチームに対し、設計・CAE環境であるHyperWorks(ハイパーワークス)のライセンスおよび技術サポートを無償で提供しています。学生の皆様に設計段階でのシミュレーション活用の有効性を実感していただき、将来社会人になられてからもシミュレーション主導による製品開発プロセスを推進されることで、日本の製造業の力をより一層高めていく一助となることを目指しています。