設計者CAEの現状における2つの側面
『設計者CAE』、『フロントローディング』、どちらもすでに10年以上前から提唱されている言葉である。そして,3次元CADツールには、解析機能を持つCAEのモジュールが組み込まれてきており、環境も整えられつつある。では、実際に、設計者はそれらを使用しているだろうか?答えは、半分イエスであり半分ノーである。イエスの部分は、設計者が、担当する設計の確認として、自分自身で簡単な解析を実施する場合が増えたところである。ただ、依然、設計者は日常業務としての設計作業で手一杯で「解析にまでは手がまわらない」といったところもあり、これがノーの部分になる。そして、どちらもフロントローディングによる効率化の恩恵にはまだあずかることができていないように思う。
なぜか。①解析の敷居がまだまだ高い、②設計のある程度進んだ段階で解析を実施するため、手戻りがあると時間がかかる……。すなわち、本当の意味でのフロントローディング、そして本当の意味での設計者CAE ツールは何かがまだ問われているのではないだろうか(図1)。 アルテアエンジニアリングは、CAEツールの開発元として30年以上の歴史を持つ。そして、数年前から今後に至るまでの一貫したビジョンは、“Simulation-driven Design”、すなわち、最初にCAEを使って発想を得て、モノづくりの変革を起こす、というものである。当社では、このビジョンのもと、構想設計環境solidThinkingブランドを立ち上げ、そのラインアップとしていくつかのツールを開発してきている。本稿ではそのなかでも、設計者がカタチを発想する、いわゆる構想設計段階での設計案の創出に使用するためのツール「Altair Inspire」と「Click2Cast(現Inspire Cast)」を紹介する。
フロントローディング実現を支援するInspire
通常、設計者は、既存の製品に問題があったときの改善案、また、全く新しい製品の設計案を求められると、鉛筆・スケッチなどで、経験と勘を頼りに、ポンチ図を描いていくことが多い。では、そこにCAE ツールを使って、初めから適切な設計案を作れたら? そして、経験と勘だけに頼らず、適切な設計案をつくるにはどうしたらいいか?Inspireこそが、これらを実現するツールである。適切とは、強度、軽量化、共振などの技術課題を最初から考慮し、トポロジー最適化計算でカタチを発想するということである。これにより、作業期間の短縮、手戻りの削減が可能となり、より良い製品を生み出すことができる。真の意味でのフロントローディングである。そして、「Inspire」は、設計者に解析の敷居を感じさせない、ストレスフリーのツールである(図2)。なぜか?その理由を下記に挙げる。
(1) 直感的なGUI(リボン型)で、しばらく使っていなくてもすぐ思い出せる
(2) 難しい言葉や表示がなく設計者の身近な表現で構成されている
(3) CADツールと簡単に行ったり来たりできる
(4) 余分な機能がついておらず、必要十分で痒いところに手が届く
上記のように、設計者向けのCAEツールに必要な事項が整えられていても、設計者の使う気持ちを阻むことがある。それは、設計対象の環境を、解析の条件にうまく変換できずに、解析が進まない、あるいは変な結果が出てしまうことである。このノウハウの構築がとても重要で、そのための社内教育、あるいは、ツールに関連した外部コンサルティング・サポートの活用が大切であろう。また、トポロジー最適化計算では、いかに設計領域を設定するかも、大事なノウハウとなっている。
鋳物の製造性を構想設計段階でシミュレーションするClick2Cast
ところで、設計者はどこまで製造を考慮しカタチを発想しているだろうか?生産技術現場から設計を差し戻されていないだろうか?

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