3Dシミュレーションでものづくり教育に躍動感を(岐阜工業高校)

アルテアのアカデミックプログラムのひとつに、授業でアルテア製品を使うことができるアルテアクラスルーム(無料)があります。主に、大学の工学系の授業で使われているのですが、岐阜県立岐阜工業高校でAltair InspireAltair Inspire Studioを使用しているというので、山口剛正先生と増井勇一郎先生にお話を伺いました。アルテアクラスルームを取り入れている高校は、日本では他にありません。

岐阜県羽島郡にある岐阜工業高校の山口先生は、知識やスキルを教えるだけでなく、ものづくりの楽しさを伝えるため、授業での取り組みを製品化につなげたり、地域社会で役立てたり、学校外でもものづくり教育を行ったりなどの独自の取り組みで知られていて、山口先生の考えに賛同する増井先生とともに、講演活動や出前授業などもされています。

高校生がInspireを使いこなす?

Inspireを、高校生が本当に使えているのか?という疑問を持っていたのですが、先生によると腕のモデルを使ってギプスを作成する授業では、メッシュデータの読み込み方を教えれば、生徒はInspireを触っているうちに使い方をみるみる習熟させていく、というのです。使い勝手よく作られているとはいえ、高校生が直感的に使いこなしていくというのは驚きでもありましたが、生まれたころから色々な形態の電子機器を直感で操作してきた世代ならではかもしれません。

生徒の中には、英語のチュートリアルなどを自ら翻訳しながら試行錯誤し、独学でフォーミュラカーのモデルを作成した車好きの生徒もいるそうです。今後は、作成したモデルを使って、流体解析にも挑戦したいのだとか。

授業にも流体解析を

増井先生は、「アルテアのツールは、教科書にはないモノづくりの面白さを知ってもらい、生徒たちのイノベーション心をくすぐる助けになる」と評価します。「来年度からはさらに利用を拡大し、航空機械工学科では、セスナの飛鷹力などの流体解析にも挑戦したいと考えています。」

また、空調や衛生について学ぶ山口先生の設備システム工学科では、コロナ以降注目を浴びるようになった気流の解析にも流体ソフトウェアを使いたいとのお声も。

「3Dスキャナーを使って室内の点群をスキャンし、PLYなどの形式で書き出します。その点群をメッシュ化し、そのモデルを使ってCFD解析を行いたいのですが、CFD解析で満足のいく結果を出すには、モデルの完成度が高い必要があります。他社製品で試してみたのですが、高い処理能力が要求されることと、モデルの完成度があまり高くないために、満足のいく結果を得られませんでした。アルテア製品を使ってこれを改善し、設置の仕方、エアコンの出力の算出などにつなげたいというのが次年度の狙いです。それが可能になれば、地元の空調設備などの業界にプラスになるのではないかと考えます。」

アルテアのAcuSolve(Altair CFDに収納)でこの解析は可能です。点群データをどのように形状データに変換していくかという問題は、Altair Communityにある「点群データからシェルメッシュを作成する。」が役に立つと思います。

 

毎年ゼロからのスタート、ではない

Inspireを使うのは主に3年生なので、ソフトウェアの操作に習熟してくると卒業してしまうのですが、翌年の3年生は、前年度のデータをよく見ているので、年々完成度が上がっていくそうです。

また、入学したての1年生に、自分たちの持つ膨大な量の知識や素材を与えると生徒たちの意欲が目に見えて向上するのですが、さらにその意欲がしぼまないようにどんどん新しい知識やツールや機器を導入するのが増井先生の戦略です。どんどん吸収していく1年生と、それに触発される上級生との間に良いスパイラルが生まれていきます。

「生徒は教師のさじ加減一つで転びも、大きく羽ばたきもします。自分たちが熱意を注げば、生徒たちはどんどん成長してくれます。生徒の学力によらず、生徒それぞれの輝く場所を提供したいという思いが、2人でものづくりをしていく原動力です。そして、同じ思いを持つ仲間が集まってきています。」

広がる輪

おふたりの活動には、学校独自で企画するワークショップや、外部からの招待で行う講演や出前授業など様々な形があります。学校独自のものとしては、年末の生徒研究発表会があります。多くのブースを設置して、生徒の内定をくださった企業や大学、短大、専門学校など学校関係の方々を招待しています。そこで非常に多くの質問を受け、それが縁で広いつながりができています。

「講演に招かれた際には、PowerPointだけでなく、実際にアルテアのソフトウェアを動かして、操作性や処理能力の高さを体感してもらうというプレゼンもしています。

全国の学校の方と話す機会もありますが、アルテアの製品は具現化するまでの流れを網羅できるオールラウンダーなところがとても良いと言う話題から、夏ごろに何校かが集まって一緒に活動を行う計画が生まれました。

また、ソフトウェアを導入したいがなかなか習得している時間がないという企業にとって、既にアルテア製品を習得していることは生徒たちの就職時の強みになっています。在学中に起業する生徒が生まれることが、2人の夢でもあります。」

ものづくりの面白さを小学生にも

将来の進路にかかわらず、小さいころからものづくりの楽しさに触れる場を作りたいという思いで、高校を飛び出し小学生を対象にした出前授業を10年以上続けている山口先生。今では、小学生の頃に授業を受けた子どもが、間もなく生徒として岐阜工業高校に入学してくるようにもなりました。

実は、お話を伺った増井先生も、40年ほど前の幼少期に山口先生の形状記憶合金を使ったものづくり体験を訪れたひとりです。その後、山口先生の実践する“ものづくりのすそ野を広げる活動”に加わったり、今では同じ職場で同僚として働いているとは驚くと同時に山口先生の凄さを実感します。

ものづくりに対する熱意の原点

山口先生

山口先生は、工業高校から大学の理工学部に進みました。

「ものづくりが好きだったので、ものづくりの前に素材や熱力学の研究をしていました。数十年前に形状記憶合金というものが流行って、温度差を利用して形状記憶合金で動力を発生させるエンジンなどを作っていました。後に、それを増井先生が見て感動したという話も聞きました。もともとは材料と熱力学を研究していて、スターリングエンジンという外燃機関で素材の強度や熱係数などを計算して、体温と気温の温度差で動作するスターリングエンジンを作りました。素材をかなり研究しないと低温度差なので動かない、そういうものを生徒に教えようとしたときには、ビジュアルが効果的です。そこから、動画の編集やプログラミングに深入りするうちに、「シミュレーションをよりグラフィカルに見せる」という取り組みに至りました。」

増井先生

なんと、あの「笑ってコラえて!」に出演経験のあるという増井先生は、新穂高(旧岐阜県吉城郡上宝村)の農家の出身で、幼少期に父と祖父が農機具の故障でけんかしているところをよく目にしていて、農業を無人化して、ケンカのない農業へと改善したいという気持ちがきっかけで岐阜高専に進みました。卒業後は金沢大学に編入学し、一度企業に就職しましたが、新入社員の教育に関わるうちに、新入社員の技術力が年々落ちていると危機感を持ち、であればと奮起して教育現場に飛び込みました。「生徒が自分の家族だったらという思いで、学習だけでなく、生徒の人生に対する教育に熱意を注いでいます。セカンドライフは、口コミだけで広げる会員制販売の農業をしたいと思っています。」

躍動感と熱意にあふれた教育

今回おふたりのお話を伺って何より感じたのは、ものづくりに対するおふたりの熱意。生き生きとした好奇心と意欲を伸ばす工夫に心を砕いていることです。技術や知識を教えるだけでない、生きた授業。自分の幼少期におふたりに会えていたら、もしかしたら違った進路に進んでいたかもしれません。

高校生が試行錯誤しながら進んでアルテアの製品を触ってくれているということを聞き、アルテア社員としてとても嬉しい時間となりました。高校時代のこの経験が、今後の未来に役立ちますように。


アルテアのアカデミックプログラム


 

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カテゴリー: 事例, 学生支援

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