身近な科学検証シリーズ
*本ブログは、本社ブログ「Digital Debunking: Could Simulation Help Food Manufacturers Achieve the Perfect Cereal Crunch?」を翻訳したものです。
コーンパフ、ライスクリスピー、フルーティーペブルズなど、アメリカで人気のあるシリアルは、ミルクをかけたときにパチパチという独特の音が出ます。ケロッグのライスクリスピーズは、1932年以来「Snap, Crackle, Pop」というスローガンで、子供たち(と大人)にシリアルを販売してきました。
ライスシリアルは加熱されることで膨張し、空気のポケットやトンネルを形成します。牛乳を加えると、シリアルは液体を吸収し、その圧力でシリアルの壁が壊れ、あのスナップ音が生まれるのです。
我々は食べ物の音を楽しむだけでは飽き足らず、Matelys Research Labが開発したAlphaCellの振動音響技術で、シリアルのランダムな空気のポケットやトンネルをシミュレートできないかと思いました。「正解の音」が分かれば品質管理にも役立つはずです。また、音による品質管理という点で、パッケージの音も検証してみたいと思いました。
振動音響技術で食品の劣化と品質を研究する
シリアルで試す前に、食品の音響応答を記録できるか、そしてその記録が意味のある結果をもたらすかを、2種類のパンの8日間の吸音率をAlphaCellで確認してみます。
吸音率は、ある周波数において、ある素材がどれだけ音のエネルギーを吸収するかを表すものです。素材の吸音率が高ければ高いほど、周囲の環境をより静かにすることができます。吸音率が1の場合は、その周波数の音響エネルギーを100%吸収することを意味します。通常、吸音率というと、劇場やレコーディングスタジオの壁に貼られている、音楽や声の聞こえを良くしたり、増幅したりするための素材を思い浮かべますが、パンをはじめとするあらゆる素材が音のエネルギーを吸収できます。パンは浸透性があり、柔らかく均質なので、多孔質体と考えても差し支えありません。
結果は以下のとおりです。異なる周波数での吸音率が数日間で変化したことから、パンが古くなったことがわかります。つまり、パンの経過日数がわからなくても、パンの音の特徴を見ればわかるということです。

食パン(左)と雑穀パン(右)の吸音率-周波数特性
周波数に対するカーブのピークとカーブの全体的な大きさは、パンが古くなるにつれて増加する傾向にあることがわかります。しかし、この増加は永遠に続くわけではありません。8日目の2つの曲線に見られるように、先細りになることがあります。これは、時間の経過とともにパンの微細構造に変化が起こるためです。
パンは古くなると、柔らかさや水分が失われます。このようなパンの物理的特性の変化は、音響特性の変化にもつながります。この変化は測定可能であり、逆算することもできる。つまり、パンの吸音性がわかれば、その経過日数を推定できるのです。
食品の多孔質性が音響研究を可能にすることがわかったので、ライスクリスピーに戻りましょう。このシリアルもパンと同様に測定し、その形状と組成を音響的な多孔質材料として数値的に表現できるか確認します。多孔質の複合シリアルをモデル化するには、配列の形状と含有物の空隙率の両方を考慮する必要があります。

ライスクリスピーの実測値(青)とシミュレーション値(オレンジ)の吸音率-周波数
多孔質複合材料としてのライスクリスピーの多孔質性(シリアル内部の自由空間の量)、空気抵抗性(シリアルが空気を押し通すのに抵抗する力)、屈曲性(シリアル内部の多孔質構造がどの程度屈曲しているか)の3つの特性をAlphaCellでほぼ完璧にシミュレーションしました。
まず、ライスクリスピーの形状(粒の形、大きさ、配列)と内部の空隙率(粒の内部にある小さな空気のポケット)の両方の影響を確認してモデル化します。エアポケットが吸音率にどのような影響を与えるかを観察するには、シリアルを不浸透性のもの(エアポケットを取り除き、固形のライスシリアルの粒)としてシミュレートします。そうすると、吸音率は大きく下がります。内部の空洞がなければ、シリアルは音のエネルギーを吸収することができず、あのパチパチ音はなくなります。
このシミュレーションは、食品メーカーが品質を確認することに役立ちます。例えば、ライスクリスピーを(迅速かつ非破壊的に)音響測定してシミュレーション値と比較し、2つのデータセットの間に不一致があれば、ケロッグ社は製造工程で何らかの品質の変更があったことを知ることができます。
食品メーカーに役立つもう一つのAlphaCellの使い方は、パッケージの欠陥の検証です。アルミホイルで蓋をしたヨーグルトカップを様々な角度で持ち上げて、振動音響を行ってみます。

試験に使用したヨーグルトカップ
結果は以下のように、ヨーグルトカップの吸音率は蓋の開いている位置によって変化することが分かりました。また、独特の周波数で鋭く急なピークを伴うことも分かりました。この結果を用いれば、生産ラインの最終段階で不完全に密封された製品を迅速かつ効果的に特定できます。型破りではありますが、吸音率のシミュレーションを品質管理に利用できることを示しています。

様々な蓋の位置におけるヨーグルトカップの吸音率と周波数の関係
AlphaCellの技術は、工業製品、自動車、消費財の分野だけでなく、食品などの分野にも役立ちます。メーカーは、製品が顧客や業界の基準を満たしていることを確認しなければなりません。シミュレーションを使えば、設計プロセスの早い段階で部品や製品の欠陥を発見し市場投入までの時間を短縮でき、物理的に複数の生産変数を個別に試験するよりも低コストで実施できます。
AlphaCellは、直感的なユーザーインターフェースによる迅速なモデルのセットアップと素早い計算により、実測データに対する騒音・振動・ハーシュネス(NVH)評価検証を容易にします。また、内蔵された独自の機能と完全なスクリプト機能により、単一のプラットフォームで音響性能の理解、実行するシミュレーションの選択、モデルの最適化が可能です。
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