デジタルで真実を暴く:エアバッグの威力で人間は吹っ飛ぶ?

この数ヶ月間、自宅で仕事をしていたので、テレビを見る時間が増え、たくさんのテレビ番組を見ています。再生リストの一番下まで来てしまったので、新しい番組を探したり、映画を再視聴したりしています。

ちょうど2014年に公開されたセス・ローゲンとザック・エフロン主演のコメディ『Neighbors』を見つけました。お気に入りのシーンのひとつは、隣人のホームパーティーで、ローゲン演じる主人公のマックが隣人を警察に通報した後、隣人のいたずらがエスカレートし始める場面です。マックは、隣人が妻の車からエアバッグを盗んだことを知っていましたが、罠が仕掛けられたオフィスの椅子に座るまで、その理由を理解できていませんでした。

「Neighbors」の公式クリップ–エアバッグ! (2014、セス・ローゲン、HD)
MadOfficialTVが2014年4月18日にYouTubeで公開

マックはエアバッグに打ち上げられ、天井に激突した後、デスクに打ち付けられます。人形のように空中に放り出されたマックは、なぜか靴まで脱げてしまいます。

最初に断っておきますが、家で試してはいけません。しかしAltairでは、高度な物理シミュレーションソフトウェアを利用することができます。それを使って、バーチャルのセス・ローゲンをどこまで高く打ち上げることができるかを試してみるのはいかがでしょうか。私たちは、エアバッグの上に人間が直接座ってエアバッグが開いた場合、実際に何が起こるのかを調べることにしました。

車の運転席側のエアバッグは、20〜30ミリ秒の間に膨らみ、時速200マイル(時速320キロ以上)という驚異的なスピードで飛び出します。このエアバッグを、約90kgの人体モデルが座る椅子の座面に設置しました。この検証では、Humanetics Hybrid II 50th Aero FE Dummy Modelと、動的荷重下での高度な非線形問題のためのソルバーであるAltair RadiossTMを使用しました。自動車モデルではなく航空宇宙ダミーを使用したのは、エアバッグとの相互作用によって生じる脊椎の軸方向の初期荷重と、純粋に首のZ方向にかかる力を見られるからです。

ダミーとエアバッグのバーチャル試験

 

 

 

シミュレーションを実行すると、仮想のダミーが空中に投げ出され、高さ8フィート(約2.44m)の天井に激突しました。映画では、コメディ効果を狙って飛び上がるキャラクターを誇張して表現しているのかと思っていましたが、実際の『Neighbors』は、現実のエアバッグの物理現象を驚くほどよく再現しています。

映画と現実の唯一の違いは、バーチャルなセス・ローゲンが受けるであろう損傷かもしれません。Radiossを使って、ダミーの頭、首、背骨にかかる力をモデル化することができました。図1では、頭部加速度が250G以上、頭部傷害基準(HIC)値が3500以上に達していることがわかります。自動車の衝突試験では、通常、3ミリ秒の間に80G強の頭部加速度が発生します。また、自動車の衝突試験で許容されるHIC値の最大値は1000であり、これも業界の安全指針を大きく上回っています。

図1:頭部加速度と頭部傷害基準(HIC)の時間変化

図1:頭部加速度と頭部傷害基準(HIC)の時間変化

図2では、天井への衝突によってダミーが脊髄損傷の危険にさらされるかどうかを確認するため、腰椎の力を見ています。腰椎にかかる力は8キロニュートン(KN)近くに達していることがわかります。ピーク時の力が持続されるのは数マイクロ秒ですが、8KNは800kg以上の力に相当します。

図2:時間経過による腰椎の力の変化

図2:時間経過による腰椎の力の変化

最後に、首の傷害基準(Nij)のプロットを図3に示します。Nijとは、頸部にかかる4つの荷重モード(引張、圧縮、前屈、後屈)を組み合わせて傷害の可能性を表す式です。安全性の評価を得るために、エンジニアはNijの数値を0.9以下にすることを目指していますが、私たちのデータではNijの数値が1.2と非常に高く、深刻な、場合によっては生命を脅かすような傷害のリスクが高まっていることを示しています。

図3:首のせん断力と軸力、首のモーメント(トルク)の時間変化

図3:首のせん断力と軸力、首のモーメント(トルク)の時間変化

最終的には、エアバッグが引き起こす驚きの飛行の物理学的シミュレーションは、映画「Neighbors」の特殊効果とよく一致しましたが、衝突シミュレーションから抽出された傷害リスクのデータは、この実験が実際にはどれほど危険かを示しています。繰り返しますが、絶対にこれを自宅で試してはいけません。

デジタルで真実を暴く:エアバッグで人間を打ち上げられるか?

HumaneticsのFEダミーモデルは、Altairパートナーアライアンスを通じてAltairユーザーに提供されています。非常に詳細で検証済みの有限要素衝突ダミーモデルは、人体損傷を評価するための衝突試験で使用される擬人化された試験用ダミー人形の挙動をバーチャルにシミュレートします。これらのダミーをRadiossの衝突シミュレーションで使用することにより、解析者は、構造的な衝突安全性や乗客の安全性を含む衝突事象を仮想環境で完全に理解することができます。

*翻訳者追記:このシミュレーションでは天井が剛壁ですが、映画では天井が壊れるので衝撃吸収されて傷害はそこまでひどくないかと思います。


*本記事は、米国本社のブログ『Digital Debunking: Could You Launch Yourself Using a Car Airbag?』の投稿文を翻訳したものです。

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カテゴリー: Innovation Intelligence Global, デジタルで真実を暴く

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