データ分析が競争力、サーキットの内外で戦うレースチーム

データ分析が競争力、サーキットの内外で戦うレースチーム

*本記事は、米国本社のブログの投稿文を翻訳したものです。

 

データ分析技術の進歩により、大量のデータを収集しインサイトを抽出することはこれまで以上に簡単に、そして価値あるものになりました。現在では、適切なツールがあればほとんどの人がスマートデータを取得、分析して、より多くの情報に基づいた意思決定を行うことができ、適切なタイミングで適切なデータにアクセスすることで大幅なコスト削減、業務効率の向上、問題発生前の予測と解決が可能になります。

レース業界では、ほんの数秒が勝敗を分けます。レースチームは、遠隔測定を含むデータ分析の活用法を探ることで競争上の優位性を獲得し、ドライバーと車両をよりよく理解してラップタイムを縮めようとしています。

 

テレメトリーとデータ伝送の変容

テレメトリーシステムは遠隔測定法とも呼ばれ、観測対象が離れている場合や移動する場合に使用され、それらのデータを取得する特殊な技術の一種です。自動車やロケット、工場など幅広いデータの取得に用いられ、一般的には無線やセルラー信号などの無線形式の通信を使用して遠隔地の測定システムに送信されます。

テレメトリーはデータ伝送が有線接続でしか実現できなかった19世紀から使用されています。米国の産業分野における有線テレメトリーシステムの最初の用途の1つは、イリノイ州シカゴの家庭全体の電力分布を記録し監視するためのものでした。ワイヤレスとクラウド技術の進歩によりデータ伝送は進化し、今では世界中の接続されたデバイスのワイヤレスシステムからの大規模なデータ収集と伝送に対応できるようになりました。

現在この技術は、製造業、農業、海洋、ヘルスケア、自動車など、多くの産業に応用されています。製造業では遠隔測定システムによって機器の故障の監視や機械の予知保全のためのリアルタイムデータの送信を可能にし、農業では農家の作物に接続されたセンサーを使用して土壌水分を測定し、農場全体のメンテナンスを確実に行うことを可能にしました。どのような業界であっても運用データの分析によって、価値あるインサイトを得られるようになりました。

レースデータ分析フロー

これからご紹介するレース業界でも、データ分析を活用して、レースカーの設計と性能の最適化を実現しています。

 

F1レースにおけるテレメトリー

1980年代からF1レースではレースカーの性能を把握し、改善するためにテレメトリーを使用してきました。ドライバーは自分の運転をより正確にする方法を見つけ、エンジニアはテレメトリーで受信したデータとシミュレーションツールを組み合わせてレースカーの設計を改善、および最適化し続けています。遠隔測定、すなわちテレメトリーは、レース中のデータをリアルタイムで可視化することを可能にし、ドライバーの次の勝利に重要な役割を果たしています。

レースカーは大変複雑なため、エンジニアは車の設計やチューニングの変更が性能や安全性にどのような影響を与えるかを考えなければなりません。テレメトリデータは、構造荷重、空力、加速、ハンドリング、燃費などに与える影響を評価するための、より正確なインプットとなります。

試走やレースで使用するレースカーには1台あたり数百個のセンサーが装備されており、無線信号を介してレースチームにデータを送信します。速度、操舵角、燃料消費量、方向転換力、サスペンションから得られるデータ(ダンパーの動きや荷重など)は、ピットクルーによってライブでモニタリングされています。1991年に初めてテレメトリーを採用したF1チームはマクラーレンで、導入当初はドライバーがクルーとすれ違うたびに少量のデータを記録するだけでしたが、現在では技術の進歩により、コース上のどの地点においてもデータを受信できるようになっています。

 

リアルタイムデータアナリティクスを使ったレース

Altairは、Altair Panopticon™を使用して、オーストリア・シュピールベルグにあるレッドブルリンクで走行するF1カーのシミュレーションを行い、即時データ処理能力の実証実験を行いました。Panopticonはデータの取得、変換、表示がリアルタイムで可能な可視化エンジンです。ドラッグ&ドロップのインターフェイスにより、データを簡単に処理し、見たい情報に応じてカスタマイズしたグラフを使用しいつでもリアルタイムに表示することができます。

こちらの実証実験のデモは、こちらからご覧いただけます。

このレースのシミュレーションでは、スピード、ブレーキ温度、ドライバーからのインプットなどのデータが、車両が周回するたびに瞬時に表示されます。ライブレースと同様に、異常を監視し、特定のデータが指定した範囲を外れた場合のアラートを設定しました。例えば、タイヤの空気圧が閾値を下回った場合にピットストップを予定し、ドライバーに新しい状況下で最大限のパフォーマンスを発揮できるように知らせるなど、チームが即座に対応できます。

レースデータの可視化

Panopticonではダッシュボードをカスタマイズでき、個々のドライバーやラップ、コーナーでのパフォーマンスを観察し、これらの情報をグラフにプロットして分かりやすい形で視覚化できます。以下は、シミュレーション中のベンチマークデータを他のラップ、他のドライバー、他のレースのデータと比較した例です。あるコーナーでは、ベンチマークラップの方が選択したラップよりも平均速度が速く、スロットルを長く開けたりブレーキをスムーズにかけたりして、レース中の全体的なスプリットタイムが速くなっていることがデータからわかります。

レースデータのモニタリング

Panopticonは、トラックサイドのアナリストが複数のリアルタイムデータを同時に表示し、過去データと適宜比較することを可能にします。これにより、走行が時間の経過とともにどのように進んでいるかを観察し、レース中の傾向を特定し、将来的にマシンがどのようなパフォーマンスを発揮するか予測できるようになります。

 

データ分析とシミュレーション

レースエンジニアは、トラック上で測定されたレースデータを物理シミュレーションと組み合わせて分析することで、車両性能を向上させるためのインサイトを発見し、設計者はテレメトリデータという実世界のフィードバックをデジタルツインに反映させ、設計変更が与えうる影響をバーチャルにテストし、コース上での影響を正確に評価できます。

シミュレーションと定量データのギャップを埋めるツールのひとつが、ChassisSimです。ChassisSimは、ユーザーにダイナミックなデータを提供するレースカーシミュレーションツールであり、車両の性能をリアルタイムにシミュレートすることができます。Altairパートナーアライアンスを通じてAltairユーザーに提供されています。

ドライバーインザループ機能はドライバーの動きとフィードバックをラップタイムシミュレーションと組み合わせることで、正確なラップタイムを予測し、データをエクスポートして確認できます。英国機械技術者協会(Institute of Mechanical Engineers UK)が最近実施したバーチャルダイナミクス競技会では、学生グループが競技中のアクセラレーション、スキッドパッド、スプリントレースのシミュレーションにこのソフトウェアを活用しました。

レースでデータ解析と遠隔測定を活用すれば、ドライバーのスムーズな走行を可能にするだけではなく、チームメンバー全員に次のレースでラップタイムを向上させるための数々のインサイトがもたらされます。データとシミュレーションツールを組み合わせれば、ドライバーやレーシングチームはパフォーマンスを最大化するために必要なあらゆる情報にいつでもアクセスできるようになります。

 

DucatiDallaraGriiipなどのレーシングメーカーが、Altairのテクノロジーを活用して勝利を掴んでいます。Altairのデータ分析ソリューションの詳細については、こちらをクリックしてください。

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カテゴリー: データアナリティクス, 学生フォーミュラ

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