多くの日本のマンションは南向きで、バルコニーに出られるガラス戸があるのが一般的です。一方で、西向きの部屋で過ごす夏を考えると、西日によって室温が高くなっていくことは容易に想像いただけるでしょう。それでは、差し込んでくる日光はどのように室温を上げ、エアコンはどのようにその室温を和らげるのでしょうか。西からの日光を浴び続けるマンションの室内温度の変化をシミュレーションしてみました。
条件

図1: 対象モデル(天井および前方の壁は非表示)
場所:東京(緯度:N 35.689 経度:E 139.692)
日時:8月10日 14:00–20:00 (日の入り:18:36)
初期室内温度:30℃
エアコン:25 ℃、風速5.64 m/s ※形状は2.8kW型
解析対象:上図参照
どこに日光を浴びるか?

図2:日光(太陽輻射)の時間変化
まず、太陽の位置とマンションの窓の向きをもとにした西の窓から入る太陽輻射(日光)の様子を示します。図2に太陽輻射の時間変化を動画で示しましたが、これをもう少し詳しく見てみましょう。図3に14時から19時までの1時間毎の太陽輻射の当たる面とその強さを表示しました。

図3:時刻別日光(太陽輻射)の当たる面とその強さ
14時:西窓に近い位置に強い日光が当たっています。
15時:太陽が傾いたので、日光の当たる位置は広がり、ソファーなどに当たった日光は反射して、キッチンのフードなどにも当たっています。
16時:さらに太陽が傾き、部屋の中央付近まで、日光が差し込みますが、その強さは14時に比べるとかなり弱くなっています。
17時:日光は部屋中央のテーブルからキッチン脇の床に差し込み、その反射が奥の壁にまで達していますが、日光の強さは相当弱くなっています。
18時:もう日の入りが近いので、日光は奥の壁にわずかに差し込んでいる程度です。
19時:太陽は沈みましたので、もう日光は差し込んでいません。
壁面温度はどのように変わるのか?
エアコンをつけた状態を仮定し、部屋に差し込む直射日光で部屋の壁温度はどのように変化するでしょうか?図4に部屋の家具や壁の温度の時間変化を動画でしましました。次は、これを少し詳しく見てみます。

図4:室内壁温度の時間変化
図5に14時から19時までの1時間毎の部屋の家具や壁の温度を示しました。

図5:時刻別室内壁および家具の温度
14時:計算開始時なので、室温はすべて30℃です。
15時:直射日光で、西窓に近いテーブルとその床の温度はかなり上がり、日光が反射したことにより、キッチンのフードやその下のキッチンテーブルも温度が高くなっています。
16時:太陽が傾いてきたので、西窓に近いテーブルとその先の床の温度があがり、奥のキッチンシンクでも温度の高いところで出ています。
17時:温度の高い場所は西窓に近いテーブルから床、さらにキッチン全面の床からの壁まで広がり、奥の壁も日光の反射で温度が上がっています。
18時:日の入りが近くなるとエアコンも効いてきて、日の入りが近くなると、エアコンも効いてきて、 温度の高い面は減りましたが、奥の壁手前はまだ温度が高い状態です。
19時:太陽が沈み、やっと部屋の温度は下がり始めました。
室内空気温度はどのように変わるのか?
壁面温度の時と同様に、エアコンをつけた状態を仮定し、部屋に差し込む直射日光で部屋の空気温度はどのように変化するでしょうか?図6に部屋の室内空気温度がわかるように、空気温28℃の等値面を半透明で動画にしてみました。

図6:室内空気温度の時間変化
これを少し詳しく見てみましょう。図7に14時から19時までの1時間毎の部屋空気の28℃等値面を示しました。

図7:時刻別室空気温度28℃等値面
14時:計算開始時なので、室温はすべて30℃です。
15時:エアコンから出た冷気(25℃)が徐々に床に沈降していき、28℃の空気も部屋中央部の床あたりまで達しています。
16時:太陽は傾いてきたので、エアコンの効きは悪化し、15時より、28℃の等値面は狭くなっています。
17時:エアコンの効きは16時と同程度で、あまりよくありません。
18時:日の入りが近くなると、エアコンも効いてきて、 28℃の等値面はかなり広がしました。
19時:太陽が沈み、やっとエアコンが効いてきて、28℃の等値面は広がりましたが、キッチン奥までは冷やせていません。
室内空気の流れ
最後に、室内の空気の流れを「見える化」してみました。もちろん、この空気の流れは空気の温度の違いによる流れ(自然対流)も加味しています。

図8:室内空気流れの時間変化
図9に14時から19時までの1時間毎の部屋空気の流れを示しました。

図9:時刻別室内空気流れ
14時:計算開始時なので、エアコンからの送風はない状態です。
15時:エアコンから出た冷気手前の壁まで達した後、降下しているがわかります。
16時:太陽は傾いてきたため、自然対流との相互作用でキッチン奥に風が流れにくくなっています。
17時:空気の流れは16時とあまり変わりません。これが意味するのは16時以降では自然対流はエアコンの流れに比べると影響が無視できる程度になったということです。
18時:空気の流れは16時、17時とあまり変わりません。
19時:空気の流れは16時~18時とあまり変わりません。
効率よく部屋を均等に冷やすには、サーキュレータなど部屋の流れを強制的に起こさないとだめだと推測されます。あるいは、西の窓にカーテンを設置し、直射日光を反射するしかないのかもとさえ思われます。
おわりに
いかがでしたか。太陽輻射や空調がどのように室温に影響を与えるか、視覚的にもお分かりいただけたと思います。
ところで、「こんな長い時間の熱流体解析はさぞかし時間がかかるんだろうなぁ」と思われるかも知れませんので、ここに解析関連情報を示します。

上のテーブルが解析時間などの要約です。なお、この計算はIntel(R) Xeon(R) Gold 6142 CPU @ 2.60GHz (16 cores)x8=128コアで実施しましたが、計算時間は2.13時間(2時間8分)ですので、実現象の時間より早く解析できています。リアルタイム解析を目指すとしても、6/2=3 => 128/3=46コアのPCで解析可能です。
今回のシミュレーションは、数値流体力学(CFD)ツールであるAltair AcuSolveを使用しました。AcuSolveを用いれば、このようなリアルタイム解析が可能です。流れ場、輻射を含む伝熱、乱流現象、非ニュートン流体の挙動など様々な解析機能が搭載されており、また、従来のCFDツールのような解析モデリング作成に関する難しさがありません。
お気軽にお問い合わせください。
本投稿に内容に関する講演を含むウェビナーが2025年1月21日(火)より開催されます。
Altair AcuSolveのウェビナーは1月28日(火)14:20頃配信予定です。
詳細は・お申し込みは以下のバナーからご覧いただけます。





