バルコニーを有する中層ビルの風洞実験を模したultraFluidXによる解析結果
高層ビルを設計する際に必要となる、建物まわりの風の流れやビルにかかる風圧を計測する風洞試験には、大型な風洞設備、建物の模型、風圧の多点計測や風洞設備を稼働させるための大きな電力などが必要で、精度の高い計測を行うためには、コスト、時間、労力がかかります。近年は、スーパーコンピューターによる数値流体計算によって、ビルの耐風解析を行う取組みも進んでいますが、1風向を計算するのに数千個のCPUコアで大規模並列計算させ1週間かかるなど、たくさんの設計案を試すことは困難です。
風洞実験を模した数値流体計算用のモデル
GPUコンピューティングによる高速な数値流体計算
アルテアエンジニアリングは、最新のGPUコンピューティング技術を用いた高速な数値流体計算のソリューションを開発しました。流体ソルバとしては、ドイツ・ミュンヘン工科大学で開発された格子ボルツマン法のAltair ultraFluidXを使います。
GPUは画像処理に特化した演算器として開発され、近年ではAIや自動運転のリアルタイムデータ処理として使用されています。CPUは演算コアが数個から数十個のものが主流ですが、GPUでは一つのチップ上に数千個の演算コアが搭載されています。1チップ当たりの消費電力もCPUに比べて数分の一となり、今後のecoコンピューティングの主役となりうる技術です。
ultraFluidXはGPUコンピューティングの技術を使い、1億メッシュほどの大規模なモデルをCPUとは桁違いの速さで計算します。しかも消費電力は抑えられ、一挙両得のソリューションです。
ultraFluidXによるビル耐風解析
下図は中層マンションの耐風解析例です。長さ14メートルある風洞を1/400スケールでモデル化しています。マンションは20センチメートルほどになりますが、バルコニーや隙間が連続する共有スペースの細部のデザインまで再現し、解析しています。
中層マンションの表面平均圧力分布(左)とバルコニー細部の流速(右)
30秒間の現象時間で解析した結果では、バルコニーで起こる渦流やピロティを通過し舞い上がる風の流れを可視化することができました。ultraFluidXとGPUを使えば、 約1億メッシュのモデルを十数時間で解くことができます。
東京大学情報基盤センターのGPUを利用
ultraFluidXは大規模GPUコンピューティングが可能な東京大学情報基盤センターのReedbushのシステムで稼働しており、東京大学の企業利用サービスにてultraFluidXを使うことができます(企業は研究用途に限り、別途ライセンスを購入する必要があります)。GPUマシン導入にためらいを感じている方はぜひご試用ください。また、東京大学のライセンスサーバに接続すれば、高性能プリプロセッサAltair SimLabや流体専用ポストプロセッサAcuFieldViewなどのGUIアプリケーションも使用できます。
短納期のブレークスルー
ultraFluidXを活用すれば、ビル建物の耐圧解析が1日で可能です。GPUコンピューティングを時間貸ししているサービスも充実しつつあります。複数ケースの計算を並列で流せば、ほんの数日で一つの設計案の解析が完了し、従来の風洞実験を圧倒的な短納期で実現します。
ultraFluidXであれば、コストをかけずに大規模な計算を短期間で行えます
無償ベンチマーク
現在アルテアエンジニアリングでは、大規模なビル耐風解析にご興味をお持ちの方、さらに短期間で風洞解析を行いたい方より無償ベンチマークを受け付けています※。ultraFluidXの実力をぜひご確認ください。お問い合わせをお待ちしています。
※風洞実験の結果のあるモデルを貸出いただきます(機密保持契約の締結を行います)

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