身近な科学検証シリーズ
今回は、理科で習った「バーナーの炎の中よりも、先端の方が熱い」というのは本当なのか、シミュレーションで検証してみました。使うのは、弊社のラインナップの中では珍しい化学系のソフト、化学反応シミュレーターLOGEresearchです。
早速使っていきます。
LOGEresearchは、1Dシミュレーション風のブロックをつなげることでモデルを構築していくGUIになっています。

1Dシミュレーション風のGUI
計算に必要な基本データ(ガス燃焼に関係する化学反応式の定義など)はLOGEresearchに付属しています。
燃料はCH4という都市ガスの主成分、酸化剤は空気としました。燃料と酸化剤の比率は、完全燃焼となるようにLOGEresearchが決めてくれます。解きたい化学反応式は CH4 + 2O2 + 8N2 -> CO2 + 2H2O + 8N2 ということになります。
条件は下の図のとおりです。
これでまずは定常状態を求めてみました。定常状態における燃料CH4の分布は次のように、着火点から1mmのうちにほぼ消滅しました。
となると、炎の先端は1mm程度のところでしょうか?ならば一番熱いのは1mm付近でしょうか?
こちらが温度分布です。ピークはもっと下流の5mmくらいのところにありました。1850℃くらいです。ガスバーナーの温度は1800℃くらいと言われているので、間違ってはなさそうです。
もしかしたら、熱の拡散や輻射の影響で、なんだかんだでピークがずれたのでしょうか?そう思ったらすぐに確かめられるのがシミュレーションの良いところです。
早速、今度は熱の拡散と輻射の影響なしで計算してみました。それが次の図です。ピークがないので、最高温度がどこか分かりにくいですが、少なくとも1mmよりもはるかに下流で最高温度に到達します。
実は、ここが学校の理科の限界です。先ほど CH4 + 2O2 + 8N2 -> CO2 + 2H2O + 8N2 という式をそれとなく書きましたが、実は、これだけではなく、CH、HOなど様々な分子が生成しては消滅しているのです。最終的に測定できるレベルで残るのがCO2とH2Oだということなのです。
それでは、もとの熱拡散、輻射を考慮したモデルでのCO2とH2Oの分布を見てみましょう。CH4が消滅したあとでも酸化反応が続いていることが分かります。
酸化反応がある限り、熱が発生しますが、輻射により熱は奪われますし、熱拡散により、より温度の低いところに熱が流れるので、そのバランスで5mm当たりが温度のピークになったと言えます。
炎がどこまで目に見えるかまではLOGEresearchは教えてくれないのですが、反応の強い1mmまではしっかりした炎があり、そこから炎が薄れていくと考えると、人の目にはちょうど炎の先端くらいで、最も温度が高くなる、となりそうです。また、少なくとも炎の根元の温度が一番低いことが良くわかりました。
ちなみに、炎はもっと長いのでは?と思われるかもしれませんが、このシミュレーションは1Dシミュレーションで、炎の帯の幅方向にシミュレーションをしているため、このような結果になります。
いかがでしたか?使ってみて、私はとても面白いツールだと感じました。Altairパートナーアライアンスで利用できますので、化学反応シミュレーターのLOGEresearch、是非使ってみてください。
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