全日本学生フォーミュラ大会やソーラーカーレースに参加しているチームにとって、軽量化は大きな課題だと思います。私も学Fで軽量化の大切さを学んできました。
さて、このたびオートバイのナンバープレートステーを設計してほしいと知人から依頼がありました。現状の部品を計測してモデリングし、リバースエンジニアリングに挑戦します。要望は以下の2点です。
- 部品数を減らしたい(ナンバープレートの穴の位置とブラケットの穴の位置が合っていないので裏に余計なステーをつけている)
- スッキリとした見た目にしたい
Altair Inspireを用いて、ステー全体を設計空間としてトポロジー最適化することで部品点数を削減しつつ、効率的な構造を目指します。あまり大きな部品ではないので、金属3Dプリンティングで製作することになりました。Inspireなら、モデリング、トポロジー最適化、積層造形のシミュレーションと検証まで行えます。この設計・製造プロセスは、オートバイのステーでなくても適用できると思いますので、本ブログが部品軽量化の参考になれば幸いです。
以下のような設計の流れになります。
- 現状の部品の計測、モデリング、アセンブリ
- 理想の配置と設計空間の決定
- 最適化と性能評価
- 3Dプリンティングシミュレーション
- 完成、取付
早速、学F以来触ってなかったノギスを持って実物の計測に出かけました。
1-1 計測
こちらがナンバープレートを取り付けているステーです(赤線で囲まれた部分)。ウィンカーやナンバー灯などもついています。(純正品ではなく、海外の通販で購入したものだそう)
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こちらを分解し、各パーツの概形寸法を計測しました。干渉を避けるため、取付寸法や、外形寸法には特に注意します。
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1-2モデリング
計測したメモを元に、Inspireでモデルを作成します。Inspireは解析や最適化のソフトだと思っていましたが、CADのようにモデリングできる機能もあるので、円形や矩形を寸法通りに描いたり、押し出しや穴あけ、参照の機能を使って簡単にスケッチできました。
メインとするパートに対して、他のパートを付け加えるようにしてアセンブリモデルを作成していきます。ここでもCADと同じように参照機能が役立ちます。
実際に作成したモデルはこちらです。ナンバー灯や取り付け部のスペーサー、ウィンカーなどもモデリングしてあります。
このモデルの境界条件としてボルト穴4か所を固定し、自重荷重4Gと共振周波数で評価してみたところ、最大ミーゼス応力49MPa、最大変位0.82mm、一次振動44Hzとなりました。これらの数値を満たしつつ、軽量化を行うことが設計目標となります。
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応力コンター図 | 変形図 | 振動モード図 |
現役の頃にブレーキキャリパーをリバースエンジニアリングしようとして失敗したことがあったので、今回うまくいくか心配でしたが、どこまで簡略化するかを考えながら測定したことで、無事に完成させられました。Inspireでのモデリングははじめてでしたが、CADのモデリングの経験があってこれくらいの単純な形状であれば、1、2時間でできるほど簡単でした。
次回は、理想の配置を決めて最適化と材料決めを行います。
3Dプリンティングパーツの設計
- モデリング編
- 理想形状編
- 最適化結果をモデリング&干渉チェック
カテゴリー: 事例