*本記事は、米国本社のブログ『Innovation Intelligence』の投稿文を翻訳したものです。
衝突安全要件が厳格化の一途を辿るなか、車両ボディの設計においてさまざまな設計戦略を開発 / 試験 / 導入する必要性が高まっています。車両の構造設計を刷新する方法としては、新しい材料の採用とそれに関連したジオメトリ仕様の変更という道が考えられます。

出展: www.dynamore.de/de/download/papers/forum08/dokumente/B-I-02.pdf : Stanislaw Klimek, Simulation of Spot Welds and Weld Seams of Press-Hardened Steel (PHS) Assemblies. Adam Opel Gmbh, Germany.
試験プロセスでは実機試験と数値シミュレーションのどちらも必要であり、しかも構造開発プロセスは時間もコストもかかることから、より効率的なプロセスが求められています。自動車産業のこの問題に対処する最先端の手法として広く認識され、また必要とされているのが、各部材の耐衝撃性の自動最適化です。
さまざまなパラメーターの衝突応答への影響を調べられるというのは魅力的です。現在は、多様な最適化アルゴリズムが搭載され、有限要素解析ソフトウェアと統合された複雑なプリプロセッシングツールが使用されています。そうしたツールで得られる結果は決して悪くないものの、きわめて多大な計算コストと計算時間を要します。多様な設計変数を考慮しなければならない製品設計の初期段階では、そうした時間とコストは問題です。ということは、シンプルで高速な手法が成功への鍵を握るのではないでしょうか。
マクロエレメント法(MEM)は最適化プロセスにぴったりの手法で、有限要素法(FEM)をいい具合に補ってくれます。マクロエレメント法が特に力を発揮するのは、柔軟な等方性材料をさまざまに組み合わせて製造された薄肉コンポーネントの大変形解析です。MEMを使用すれば、車両開発の初期段階をきわめて効率よく進められます。
MEM法はシンプルなモデリングを基礎としており、断面レベルではスーパーフォールディングエレメント、3次元の構造物ではスーパービームエレメントを使うことにより、さまざまな設計コンセプトについてシンプルなモデルを作成できます。最適化を行う際の最も大きなメリットは、シンプルな構造物のデータ(点の座標、プレートの板厚、割り当てられた材料)を簡単に修正できる点です。計算時間の面でも、数個の断面であれば数秒以下で済み、複雑なビーム構造でも数分を超えることはありません。これにより、最適化ループの無数の解析を妥当な時間内で完了することが可能になります。
MEMソルバーは互換性の高いファイル形式を使用するため、最適化で必要なツール(入力データ編集ツール、ソルバー、出力データ収集ツール、結果可視化ツール)とも難なく連携できます。計算結果は、実機試験の結果やFEMの計算結果に見劣りしません。しかもそれを低い計算コストで実現できるのが最も重要な点です。
使用例: Bピラー
MEM法の実用的な使用例としては、アセンブリの曲げ応答を調べる、Bピラーの強度試験が挙げられます。
エンジニアが直面する最も難しい問題のひとつが、Bピラーの質量を削減しつつ、すべての衝突性能要件を満たすことです。Bピラーの2次元および3次元レベルの設計プロセスに適用できるMEM法は、軽量化と衝突性能を両立させるための一助になります。
最初の作業は、さまざまな材料やレインフォース形状変更を考慮した断面のモーメント耐力解析です。
最高の衝突性能を出すために、Bピラー断面のシンプルなMEMモデルは修正と試験を繰り返し実行できます。モデルがシンプルなため、ジオメトリの修正は素早く簡単に実行できます。また断面の各プレートは個々に定義できるため、さまざまな板厚や材料を試すことができます。
2次元レベルのモデルの計算時間は、標準的なPC上でコンマ数秒もかかりません。計算が完了すると、解析した断面の曲げ応答を含む、何項目もの結果が得られます。HyperStudyとマクロエレメント バッチモードプロセッサーを使用して、自動最適化ルーチンを実行することも可能です。
3次元の構造物を扱う場合は、MEM法を使って、節点とスーパービームエレメントからなるシンプルなBピラービームモデルを定義します。これにより、さまざまな断面形状や材料の仕様をいくつもの組み合わせで試験できます。また、FEツールからデータをインポートすれば、モデリングプロセスを半自動化できます。初期境界条件は、運動学的制約条件を節点に設定する形で定義します。上図のBピラー構造は、11の断面、14の節点、13のスーパービームエレメントから構成されています。
上図の荷重ケース(シミュレーション時間350ms、時間ステップ87,500)の計算は、わずか6秒で完了します。
このソリューションでは、結果を可視化したり、各要素のチャートを生成したりすることも可能です。
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